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山笠ナビ山笠ナビ通信山笠ニュース特別インタビュー:”ガンダム山笠”を動かした男たち~第1回「博多人形師 田中勇 ~前編~」

特別インタビュー:”ガンダム山笠”を動かした男たち~第1回「博多人形師 田中勇 ~前編~」

”ガンダム山笠”を動かした男たち ①(全6回) バンダイナムコフィルムワークスさんより
「山笠っぽくしてください」って言われたんで、
逆に悩みモードに入りましたね。
博多人形師 田中 勇

今年の山笠で最も話題になった「ガンダム飾り」
これを手掛けたのは伝統工芸士でもある博多人形師の田中 勇氏だ。

山笠が終わって、丁度一か月後の2024年8月16日。
綺麗に片付いた静かな工房の片隅で、2時間40分に渡って色々振り返ってもらった。
余りにも長く、余りにも濃い内容なので、
田中人形師へのインタビューは前・中・後編の三部に分けてお送りする。
シリーズ第一回となる田中人形師 前編となる今回は、
どのようにこのガンダム飾りが企画され、そしてどのように人形作りがスタートしたのかを振り返る。
田中師のロボLOVE度が駄々洩れするトークを、とくとご覧あれ。

田中 勇TANAKA isamu

  • 田中 勇 / 博多人形師、伝統工芸士
  • 昭和46年 福岡市早良区干隈で生まれる
  • 平成元年 博多人形師でもある父 田中比呂志に師事
  • 平成 5年 博多人形作家協会に入会
  • 平成10年~ 博多祇園山笠 八番山笠 上川端通の見送りを担当
  • 平成15年~ 博多祇園山笠人形師の会設立に入会
  • 平成21年~ 博多どんたく 大黒流 傘鉾の絵を担当
  • 平成21年~平成23年 博多人形青年部会 会長就任
  • 平成23年~平成25年 博多祇園山笠 櫛田神社内飾り山 見送りを担当
  • 平成28年~ 博多祇園山笠 博多商店連合会 飾り山の見送りを担当
  • 平成29年~ 博多祇園山笠 八番山笠 上川端通 表・見送りを担当
  • 令和2年 伝統工芸士に認定
田中人形師
ですね、なかなかな(笑)。「終わるとかいな?」と思いましたね。でも、やっぱ期日が来たら終わるんだなって。
終わったら終わったで、速攻人形の注文や催促の電話がかかってきて、人形製作にだーっとかかってました。本当はまだ仕事あるんですけど、手を負傷したんで。
田中人形師
8月5日に掃除している間に、ガン!ってぶつけて。大分痛みが引いたんですけど、ここ(右手の拳の薬指~小指辺り)が真っ平らになってて。あの・・・ヒビが入ってるんですよ、多分。ここの辺りがふにゃふにゃなんですよね。
田中人形師
ガン!ってぶつけて「あ、手が動かない」って(笑)。だから今、手に力が入んないんです。
田中人形師
ですね。納期が来るからどうにか仕上げて。それでもまだ残っとるけど、お盆って事でぼちぼち掃除の追加をやりながらちょっとさぼってます。

令和六年の山笠の話題をかっさらった”ガンダム飾り”

田中人形師
へー。本当ですか!
田中人形師
自分も見てたんですが1つだけ「造形が・・・」って書かれてて。「あ、ごめんなさーい」っって思って読みました(笑)。
田中人形師
わははははははは!

なぜ”ガンダム飾り”は『逆襲のシャア』だったのか?

田中人形師
えっとですね、多分前の年の11月ぐらいじゃなかったかなあ・・。
テーマの候補が複数あった中に「ガンダム」があって。じゃあ、ガンダムで話を進めろうってなって、それで2月ぐらいにガンダムに決定です、って話が来て・・・3月やったかな。その頃に広告代理店さんのオフィスに行ってバンダイナムコフィルムワークス(以下『BNF』)さんとZOOM会議をやった、みたいな感じですね。
『逆襲のシャア』 正式名称『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。1988年に劇場公開されたガンダムシリーズの映画。ガンダムシリーズの主要人物であるアムロ・レイとシャア・アズナブルの最後の戦いを描いている。
田中人形師
会議で言われたのが「福岡のガンダムシーンを盛り上げたい」っていう事から「『ららぽーと福岡※注』の(νガンダム立像)を使ってください」て来たんです。そこから「じゃあ『逆襲のシャア』でいきましょう」と。そうなると、やっぱストーリーの中心はアムロとシャアですから、νガンダムが出るならサザビーかな。あとはアクシズ落としのシーンだよなーと。
SNS見てたら意外と「アクシズがある!」って人が多かったですけど、「そうね? どっちかというと『逆襲のシャア』ってアクシズ落としがメインじゃねえの?」と思ったんですけれど(笑)。みんなアクシズに興味あるんだ、って思いました。
『ららぽーと福岡』 2022年に開業した大型商業施設。目玉はフォレストパークにそびえ立つ実物大νガンダム立像「RX-93ff νガンダム」。実物大ガンダム立像の中で歴代一の高さを誇る。施設では3つのエリアからなる「ガンダムパーク福岡」が展開中。 https://mitsui-shopping-park.com/lalaport/fukuoka/event/2718166.html
『SDの武者頑駄無』 1988年頃から登場した戦国時代の武者をモチーフにした鎧兜や刀などをガンダムに装備させた斬新なデザインのガンダムシリーズ。 『Gガンダム』 正式名称は『機動武闘伝Gガンダム』。1994年にテレビ放映され「各国を代表する格闘家がガンダムを用いて世界の覇権を格闘技大会『ガンダムファイト』で争う」という今までのガンダムシリーズとは路線を別にしたストーリーと世界観が話題となった。 https://g-gundam.net/
田中人形師
調べたら、意外とGガンダムって視聴率は良かったらしいですね。面白かったんで結構見てましたよ。他のシリーズもいろいろあるけど、後の方ってガンダム対ガンダムが多いじゃないですか。なんかあれがなんかゴチャゴチャしててあんまり好きじゃなくて。それからしばらくして『08小隊※注』が出たじゃないですか。「キター! これこそガンダムやろ!」と思ってました。
『08小隊』 正式名称『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』。1996年に発表されたOVA作品。ファーストと呼ばれる『機動戦士ガンダム』とほぼ同時期を描いた外伝作品で、他のガンダムシリーズ作品よりも戦場の生々しさやリアリティを追求したストーリ展開が特徴。
田中人形師
あははは。ですかねえ(笑)。
(サザビーのRGプラモデルを手に取って)このサザビーもガンダムも同じサイコフレーム使ってるじゃないですか。ある意味、ガンダム対ガンダムではありますよね。確か連邦がジオンから接収した機体からサイコフレームを入手したとか※注、ごちゃごちゃしてる話ありましたよね。ジオンも連邦も機体を作ったとか、そんな話どこにあったの?!と思って。
『連邦がジオンから接収した機体からサイコフレームを入手したとか』 この部分の設定は、1988年の富野由悠季著『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』では「意図的にシャアが残していったサイコ・ドーガを鹵獲し、ロンド・ベル隊がサイコフレームを入手した」となっている。
田中人形師
そのZOOM会議の時に「もう2体増やすことは可能ですか?」ってBNFさんから言われたんですね。実は自分も「ガンダムとサザビーだけやったらちょっと面白くねぇな」って思ってたんで、「お、どういうことですか?」って聞いたら「ジェガンとギラ・ドーガを入れてもらいたい」って提案があって。自分、どっちかというとそっちの方が作りたかったんです(笑)。
田中人形師
自分の子供の頃って、ガンプラは『ザク』と『ジム』と『ボール』しか作ってなかったんですよ。『ザクタンク』とか『ザクキャノン』とかを、旧ザクから作ってたりしてたんです。なんか普通のザクと旧ザクって比べると、見た目が旧ザクの方がしっかりしてて。普通のザクはちょっとデッサン的にはおかしかったんで、いつも旧ザクを買ってザクに改造して作ってたんです。
田中人形師
ですねえ。で、改造して作り替えた旧ザクベースのザクを使って、今度はザクタンクとザクキャノンを作ってて(笑)。ザクタンクとザクキャノンっていうのは、その当時実際販売されてなかったんですよね。ボンボンとかのマンガで・・・
『プラモ狂四郎』 『コミックボンボン』(講談社)誌上で1982年2月号から1986年11月号に連載された漫画。当時のガンプラブームに乗り「プラモや玩具をシミュレーション世界で戦わせる」という設定が子供達に受け大ヒットした。作品中で行った改造方法が掲載されたり、登場したオリジナルの機体が実際にプラモデルで発売されたりと、ガンプラやガンダムシリーズにも様々な影響を与えた。
田中人形師
そうそう。ザクタンクとかザクキャノンもそうですし、パーフェクトジオングとか。”足いらんやろ”って設定で足がなかったのに、足付けたら”パーフェクト”になって。だからそれ見てドムの足をつけるヤツがおったり。
田中人形師
多分そうですよね。あのマンガから生まれたオリジナルの機体とか多かったですもんね。
マンガの中で、マゼラ・アタックを改造してザクタンクを作ってたりとかしてて。そういうのを読んで自分も「あ! やろう!」となって作ってたんですよ。だからそこら辺しか作ってなくて、ガンダムを作った記憶がないんですよね、あんまり。作るっていってもジムばっかりなんですよ。ジムも好きで、ジムばっかり作って。
田中人形師
ボールは形が好きで。そのままのいろんなボールを作ってましたね。あれはすごくいい機体やなと思ってましたね。
田中人形師
あれはかっこいい! あれが後のシリーズに続いてないのがちょっと不思議でたまらんですね。絶対必要と思うんですけどね、ああいうの。だからボールもよく買ってて。
田中人形師
あ、ズゴッグはよく作ってましたよ。ズゴッグとドム。
田中人形師
そうですね(笑)。連邦はジムぐらいですかね。そこまで機体がないですしね、キャノンとタンクとガンダムぐらいなもんで。
そうこうしているうちにダグラムに移行しちゃったんですよ(笑)。ダグラムも主役じゃなしに、赤い機体の二人乗りの・・・そう、ブロックヘッド! ブロックヘッドのクソでっかいプラモをお金貯めて買って。小っちゃいヤツはやっぱデッサンがおかしかったので、なんか6000円ぐらいするやつをお年玉をためて買って作ったりしましたね。
で、スコープドッグが出てくるボトムズに移行したり。機械的なのばっかりですね(笑)。
田中人形師
そうですね。スコープドッグとかもう最強と思うんですよね。あの時代にあんなに動くやつ、すげーって。ただ、乗り降りするのにこうなるやつ(降着ポーズを取る)は「あれは無理!」と思ってましたね。こう動きよったらこう倒れるやろって。作家は同じでしたっけ?
『大河原邦男』 メカニックデザイナー、工業デザイナー。 日本のメカニックデザイナーの草分け的存在で、代表的なデザインは『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ、『ヤッターマン』シリーズのメカ、『科学忍者隊ガッチャマン』番組タイトルロゴなどなど。今もなお第一線で活躍しており、2020年「もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ」のメカ、2022年映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」、2024年映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」ではメカニカルデザインを担当している。2012年、第16回文化庁メディア芸術祭功労賞を受賞。
田中人形師
あ、大河原邦男! それだ(笑)。
で、会議でジェガンとギラ・ドーガを作って欲しいって言われたじゃないですか。ジェガンとギラ・ドーガって、いうならザク系統とジム系統じゃないですか。自分ザクとジムが好きなんで「あ、やります」ってそれを受けて。だから、ギラ・ドーガを作りよぅ時が一番楽しかったですね。
田中人形師
今回のやつはジェガンよりギラ・ドーガの方が面白かったんですね。ジェガンは手伝いに来てくれた同級生の友達に「これ作って」って言って全部任せて。大体1.3、1.4メートルの大きさですかねえ。
田中人形師
だって、作りたかったですもん(笑)。
意外とその声が多かったですよね。びっくりしたのは『ふくや』※注さんも書いてたんですよ。「あ、そうなんや」って。
『ふくや』 福岡県福岡市博多区に本社を置く今や全国的な博多名物となっている「辛子明太子」を開発した福岡・博多の老舗明太子店。 「利益を上げて、社会貢献する」という考えから、地域の地場企業の支援を始め、博多祇園山笠や博多どんたくなどの伝統行事を継続的に支援・参加、サッカークラブ・アビスパ福岡のスポンサー企業であり、社長がクラブの取締役を務めていることでも知られている。 https://www.fukuya.com/
田中人形師
ただ、元々この2機のポーズをνガンダムとサザビーと同じような恰好にしてたんですよ。そしたら「あれ~同じ格好やなぁ・・・」ってそれに気付いちゃったら、それが気に入らなくなってしまって。で、5月7日にBNFさんが工房に見学にいらしたんですが、その時に「ちょっとポーズを変えたいんですけど」って言ったんですね。そしたら「大丈夫ですよ」って言われたんで、もうその日のうちにギラ・ドーガがジェガンに胴体を斬られるやつにしまして。これ、ファーストガンダムの第1話でザクがガンダムにビームサーベルで斬られるシーンのオマージュにしたんですよ。映画(※『逆襲のシャア』)では斬られるシーンはないんですけど。
で、5月7日に見学に来て、その日のうちに下絵を描いて、8日に送って。で、9日にはOKが出て(笑)。

本物の設計図通りに作られたガンダムの人形

田中人形師
ですねえ。で、プラモを使って、プラモが取れるポーズの範囲でレイアウトを作ったんですよ。じゃないと形がおかしくなると思ったんで。自分でいろいろポーズ付けて写真撮ってそれを元に下絵を描いた感じですね。
田中人形師
そうですね。でも、RGとかMGとか※注無茶苦茶動きますけど、HGはそんなに動かないのがありますからねぇ。
例えば太ももの所のフロントアーマー(※太ももの付け根部分に付けられた板)があるじゃないですか。このモデルは左右どっちも独立しててそれぞれ動くんですけど、こっちのモデルは一本の棒でつながってるんですよ。だから片方の足を上げると、このフロントアーマーが両方とも上がってリアリティがないんですよね。「うわ。これ、以外と動かねぇな」って思いながら、ポーズを作ってました。
『RGとかMGとか』 ガンプラの種類(グレード)。HG(ハイグレート)、RG(リアルグレード)、MG(マスターグレード)、PG(パーフェクトグレード)などなど、グレードによって作りやすさや造形の細かさ、大きさなどが異なり、挙げた物以外にもまだまだグレードが存在する。なお造形の細かさはHG<RG<MG<PGとなっており、HGは1,000円~3,000円前後だが、PGになると10,000円~30,000円前後もする。 https://mitsui-shopping-park.com/lalaport/fukuoka/event/2718166.html
田中人形師
いやー、高くて・・・(笑)。
田中人形師
νガンダムとサザビーの方は、ららぽーとに立っているνガンダム立像の設計図をもらったんですね。これがクッソ細かい設計図で。この図面を2メートル60cmに縮尺して、でかい業務用のプリンターで印刷して各パーツを作ったんです。
サザビーは多分立像と同系統で書いたような、こちらもクッソ細かい設計図をもらいまして。
田中人形師
ガンダムはですね。サザビーはそれに近いもので・・・もしかしたらこれ(RGモデルのサザビー)以上に細かさが凄かったですよ。あまりの細かさに「これは無理! ここまで行くのは無理!」「いろいろ取捨選択していいですか?」と言ったら「いいです」ってことになりまして。
ホントは、こんな刻みとか筋彫りの所とか入れたかったんです、筋彫り”ぐらい”までは。・・・間に合わなかったですねぇ(苦笑)。だから、サザビーの一部だけは手伝いに来てもらった友達にちょっと入れてもらったんですけど。で、ガンダムのここ(頬当り)も筋彫り入れようと思ったのに入れ忘れて、「あー!忘れた」ってなって。入れようにも飾り付けた後だったんで入れられんくなって。
田中人形師
ギラ・ドーガとジェガンは、デッサンをもらいましたね。映像の方の製作段階のデッサン。細かめに書いたもので最終決定版のやつ。これで決まりです!っていうデッサンをもらって。
田中人形師
あれです。それをもらって読んだら、原画のサイズとプラモのサイズが全然違うんですよ。頭も大きいし肩とか足とか・・・どちらかといえば手が小っちゃいかな。足もずんぐりして。自分はその原画のサイズが最高に良くて。なのでギラ・ドーガは、その原画の方を使いましたね。プラモのサイズ感だと、頭のサイズとか体の形が絶対おかしいと思ったんで、「こっちのほうが絶対かっこいいけん!」って原画の方を使いましたね。
田中人形師
多分そうですよね(笑)。やっぱプラモデルはスタイルがよすぎるってのもあるし、原画見たら「やっぱ、そうなんや」ってなりますもん。そのサイズ感ってどこで変わるんですかねぇ。
田中人形師
どうなんですかね。”人間臭い”サイズ感なのかもですね。言うたらパトレイバー※注とかみたいに手足が長くなって。あれって人間でいうとほんとスーパーモデルな感じじゃないですか。逆に兵器として考えると、手足が長くない方がいいと思うんですよね。
『パトレイバー』 正式名称は『機動警察パトレイバー』。ロボット技術を応用した歩行式の作業機械「レイバー」が活躍する近未来の東京を舞台に、新設された警視庁のレイバー部隊「特車二課」の活躍を描く群像劇。1988年のOVA以降、様々なメディアで展開され、2026年には『機動警察パトレイバーEZY』が予定されている。 https://patlabor.tokyo/
田中人形師
あ! そういったら今回はですね、飾り山笠だとナビさんが言ったように普通は「下から見たらこうなる」みたいなことを考えるんですよ。でも今回のガンダムの飾りは、そのまんま作ろうと思ったですね。1分の1じゃないですけど、誇張なしにそのまんま作ろうと思って作りましたね。
田中人形師
何も言われてないですね。「お任せします」に近かったです。最初の時の話では「審査があります」って事を聞かされてたんですよ。だけど1回もなかったです。あるとしたら「ジェガンとギラ・ドーガを追加してください」とお願いされたことぐらいで。
ジェガンとギラ・ドーガのポーズを変えたいって言った時も、「いいですよ」って言われて、自分が修正した下絵を「こんなんですけど」って見せたら「あ、いいですね」みたいなのでさくっと終わったっていうか。
田中人形師
そうですね。逆に「山笠っぽくしてください」って言われましたね。
田中人形師
多分ですけど、向こうには「あ、この人、ガンダム好きなんやな」っていうのが最初にもう伝わってたんで、「あとはお任せします」状態だったんじゃないかなあと。「多分大丈夫でしょ」って感じだったんで。
逆に「山笠っぽくしてください」って言われたんで、自分が「うわ、山笠っぽくってなんやろーっ?」て悩みモードに入って(笑)。
そしたらそれを察したのか、BNFの人が「田中さん・・・ガンダムって宇宙空間になぜか波しぶき出ますよね?」って言ってきて。「・・・・・・あ・・・ララァ※注?」って。「そうです!」ってなって。「ああ・・・白鳥も飛んでたなあ・・・」とかいろいろ言いよるうちに「ああ、できるかも・・・」ってなりましたね。
『ララァ』 本名ララァ・スン。『機動戦士ガンダム』に登場した、シャアよって見出された”ニュータイプ”の少女。ガンダムシリーズの設定を担う超重要人物で、シャアとアムロに深く関わる。2人はララァの存在を引きずりながら生きていく。 https://patlabor.tokyo/
田中人形師
そうですね。他にも向こうから先に言われたのが「神社に入るのに重火器ってどうなんですか?」って。最初νガンダムもサザビーも、ビームライフルとかを持ってた下絵だったんですよ。『逆襲のシャア』の舞台は宇宙戦がメインですから。ただ、そういうアドバイスをもらって「そういや、そうかな」って思って「じゃあ、ヒートホークとビームサーベルに変えましょうか?」「あ、それでお願いします」ってなって。そこで重火器は一切出さないっていう方針になりましたね。
田中人形師
開発の人も話を聞きよったら、やっぱりマニアというかオタクというか・・・その集まりですね。質問する所がもう解像度が高くて、話が弾むんですよ。いろんな作家さんの名前がどんどん出てきますもん。「これは誰誰さんの描き方に近いですね」とか。
だから、ヒントの出し方とか、話していろいろ解決していく段階の提案の着眼点がすごいんですよ。さっきの謎の波もそうですけど、話しているうちに向こうからヒントが出て来て「ああ、できるわ」「それ、組み合わせましょ!」ってなって、ジェガンとギラ・ドーガの後ろに波を入れたりとか、そんな風に作ったですね。
だから、たまーにSNSとかで「なんで宇宙空間で波!?」って書いてる人がおったけど「出るやん」と(笑)。『逆襲のシャア』の劇中でも、ララァが出てきた時にざばーんと波出てるやんと、白鳥になって出てくるやんと(笑)。
田中人形師
あ、そうそう。打合せの段階で色々話させてもらったんですけど、最初のZOOM会議の時に「田中さんはガンダムのどのシリーズが好きですか?」って聞かれたんで「08小隊です」と答えると、「渋いですね~・・・逆襲のシャアでは無いんですね」と言われて。その方、ガンダム立像の担当者さんだったそうで(笑)。
田中人形師
ただ、みんないい物を作りたいってのは共通してるので、自分が「ここのスタイルが良すぎに感じるんですよね」って思ってる事をズバッと言ったら、「実はそこは現場でもそういう意見もあって」って向こうからも忌憚のない回答が返ってきたりして、なかなか面白かったですね。いろいろな話が聞けて。

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