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山笠豆知識 YAMAKASA TRIVIA

山笠の禁忌(タブー)

770年以上の伝統を誇る「博多祇園山笠」は、山を神様に奉納する神事であるため、山笠期間中は守らないといけない「禁忌(タブー)」「断ちごと」が存在します。
禁忌は古い言い伝えであり根拠がない物ではありますが、奉納行事である山笠期間中での事故や怪我を嫌う山笠の男達は、770年以上経った今もなお「禁忌」を厳守するようにしています。

胡瓜断ち(きゅうりだち)

一番有名な禁忌は、山笠期間中はキュウリを食べてはいけないというもの。
なぜなら、輪切りにしたキュウリの切り口が、山笠の祭神・祗園神(スサオノミコト)のご神紋である木瓜(ぼけ)の花に似ている所から”ご神紋を口に入れることは畏れ多くも憚れる”と氏子が食べることを遠慮した・・・というところから由来すると言われています。

700年以上も経った今もなお、山笠参加者は7月1日から7月15日の間はサラダに入っているキュウリは必ずつまみ出しますし、この期間は博多小学校の給食献立表をみても「キュウリ」の文字がありません。

『胡瓜断ち』についてもっと詳しく知る

女人断ち(にょにんだち)

胡瓜断ちと共に現在も伝えられる禁忌は「女人断ち」です。
山笠参加者は、山笠行事の開始となる『お汐井取り』の行事にて身を清めます。身を清めた事によりこの日から山笠の奉納が済む15日まで、山笠に出る男達は女性との接触を避けなければなりません。

昔から博多祇園山笠は”女人禁制”の祭りであったため、平成15年までは舁き手の詰め所の入口には「不浄の者立入るべからず」と書かれた立て札が立てられ、女性は各町の山笠詰所に入れないしきたりがありました。しかし、この立て札は「女性を蔑視したもの」という声が上がったため、平成15年に全流にてこの立て板は全廃されています。

山笠飾り(人形)のタブー

参加者だけに禁忌があるわけではありません。
現在では各流も人形師もあまり気にしなくなりつつありますが、舁き山笠、飾り山笠に飾り付ける人形には「この人形を飾り立てると縁起が悪い」と言った「人形のタブー」も存在しています。

代表的な人形でいうと、甲斐の武将「武田信玄」。武田信玄の人形を飾った寛文2年(1662年)は、山笠が家に倒れかかり火事が起こったり、元禄5年(1692年)には飾り山の前で人が間違って殺されたりしているため、その後、武田信玄単体で飾られることはあまり見たことがありません。

また、その武田信玄と宿敵であった上杉謙信が激突する名場面「川中島の合戦」も大喧嘩が起きやすいと言われており、昭和63年に放送された大河ドラマ「武田信玄」ブームの際は、武田信玄の人形を抜いたり、山笠の上部に不動明王を置いて厄除けにするなどの工夫を施されたほどです。
(写真は2009年の千代流飾り山「天地人」。大河ドラマ「天地人」は上杉家の話ではあるが、上杉武田両家が出てくる事を考えてか、天辺に不動明王が乗っている。)

他にも・・・

  • 『高野師直』は不吉とされています。高野師直を飾った享保8年(1723年)は人形に3匹のヘビが巻き付いて山笠が倒れてしまい山と人形が壊れ火事になったり、元禄6年は肥後浪人が街で刀を振り回し大騒ぎになった・・・という記録が残っています。
  • 『曾我兄弟』を飾ると喧嘩が起きると言われています。
  • 『菅原天神(菅原道真)』を飾ると雨が降と言われています。
  • 鎌倉時代の武将であった『菊池武時』は、櫛田神社から神前に鏑矢を射たためタブー視されています。

というような武将にまつわるタブーが存在しています。武将以外では、

  • 元禄十年『殺生石』の標題で山笠を作ったところ、飾付けを手伝っていた町内の人が山の一番上から落ちて亡くなったので不吉とされています。
  • 水神である『龍』を飾ると雨が降ると言われています。(明和七年には少将が龍を飾ることを嫌い飾りを作り直させた・・・という記録もあります)

というような言い伝えがあります。
特に『龍』については勇壮なイメージからよくモチーフとして登場するのですが、登場するたびにこのタブーが持ち出され、雨が降ると「龍が上がってるもんな」と苦笑交じりの笑い話が交わされる事が多々あります。