山笠豆知識 YAMAKASA TRIVIA

山笠の禁忌(タブー)

760余年の伝統を誇る「博多祇園山笠」は、山を神様に奉納する神事であるため、山笠期間中は守らないといけない「禁忌(タブー)」「断ちごと」が存在します。
禁忌は古い言い伝えであり根拠がない物ではありますが、奉納行事である山笠期間中での事故や怪我を嫌う山笠の男達は、760余年経った今もなお「禁忌」を厳守するようにしています。

胡瓜断ち(きゅうりだち)

一番有名な禁忌は、山笠期間中はキュウリを食べてはいけないというもの。
なぜなら、輪切りにしたキュウリの切り口が、山笠の祭神・祗園神(スサオノミコト)のご神紋である木瓜(ぼけ)の花に似ている所から、ご神紋を口に入れることは畏れ多くも憚れると恐れ、氏子が食べることを遠慮した・・・というところから由来すると言われています。

700年以上も経った今も尚、7月1日から7月15日の間は、山の舁き手はサラダに入っているキュウリは必ずつまみ出しますし、この期間は小学校の給食献立表をみても「キュウリ」の文字がありません。

女人断ち(にょにんだち)

胡瓜断ちと共に現在も伝えられる禁忌は「女人断ち」です。
山笠行事の開始となるお汐井取り(一番山笠は7月1日、その他の流は7月9日)にて身を清めます。身を清めた事によりこの日から山笠の奉納が済む15日まで、山笠に出る男達は女性との接触を避けなければなりません。

また、その昔、博多祇園山笠は女人禁制の祭であり、かつては舁き手の詰め所の入口に「不浄の者立入るべからず」と書かれた立て札が立てられていました。この「不浄の者」とは喪中の人と女性のことを指しており、女性は舁き手の詰め所に入れないしきたりがありました。
しかし、この立て札は「女性を蔑視したもの」という声が上がったため、平成15年より全流にてこの立て板を全廃しました。

人形のタブー

参加者だけに禁忌があるわけではありません。
現在では各流も人形師もあまり気にしなくなりましたが、舁き山、飾り山に飾り付ける人形には「この人形を飾り立てると縁起が悪い」と言った「人形のタブー」もまことしやかに存在しています。

例えば、代表的な人形でいうと甲斐の武将「武田信玄」。武田信玄の人形を飾った寛文2年(1662年)は、山笠が家に倒れかかり火事が起こったり、元禄5年(1692年)には飾り山の前で人が間違って殺されたりしているため、その後、武田信玄単体で飾られることは見たことがありません。

また、その武田信玄と宿敵であった上杉謙信が激突する名場面「川中島の合戦」も大げんかが起きやすいと言われており、昭和63年に放送された大河ドラマ「武田信玄」ブームの際は、武田信玄の人形を抜いたり、山笠の上部に不動明王を置いて厄除けにするなどの工夫を施されたほどです。
(写真は2009年の千代流飾り山「天地人」。大河ドラマ「天地人」は上杉家の話ではあるが、上杉武田両家が出てくる事を考えてか、天辺に不動明王が乗っている。)

他には、高野師直を飾った享保8年(1723年)は人形にヘビが巻き付いて山笠が倒れてしまい山と人形が壊れた・・・という記録が残っていたり、竜神の人形は水神様のため大雨が降るとして製作を避けられる事が多いです。

少し性格が違うタブーとしては、鎌倉時代の武将であった菊池武時の人形。博多に設置された鎮西探題に出仕した際、反旗を翻して博多を攻めて火を放ち、櫛田神社に鏑矢を射たためタブー視されています。