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現代絵師 山下良平さんの5年ぶりの福岡個展「HOPE」が始まりました

大寒波が到来し冷凍庫のような寒い一週間が始まった福岡の町。
本日2021年1月8日は積雪により、博多の町も真っ白な景色となりました。

そんな凍てつくような寒い中、春吉1丁目のTAGSTÅ GALLERY(ホテルニューオータニの裏手)にて、現代絵師 山下良平さんの個展「HOPE」が1月7日(木)より始まりました。
福岡県那珂川町の出身の山下さんにとって、約5年ぶりとなる福岡での個展となります。
山下さんと言えば、新国立競技場に最も近い外苑前駅のステンドグラスアート制作、ナイキジャパン本社の室内壁画、セーリング五輪代表チーム公式ビジュアル天神など手掛けられていますが、福岡の人達には福岡証券取引所の証券ビルショーウインドウを季節ごとに彩る迫力ある絵として、覚えている方が多いのではないでしょうか。

山下さんの絵の特長は、人や物から湧き立つ生命の動きや力、余韻などを絵の具に乗せて描き出すそのタッチで、それはまさに山下さんがテーマにしている「躍動」そのもの。
今回の個展タイトルは「強い生命力と同時に一瞬で終わりゆく哀しみも存在する。儚いものだと分かっていても永遠であってほしい」という希望の意を込めて「HOPE」と名付けたとの事です。

「このギャラリー(TAGSTÅ GALLERY)は10年目を迎え成熟したギャラリー。このギャラリーに負けない作品を準備できたと思っています」と山下さん。

今回は福岡証券取引所のショーウインドウに展示された作品の原画も展示されています。

やはり目を引くのは、そのショーウインドウにも展示された博多祇園山笠を描いた山笠シリーズの3作目「Yamakasa 3」の原画。

「この作品は『水』をテーマに、水の勢いを描きたかった」と山下さん。
大博通りを思わせる道を多くの参加者が舁き山をエネルギッシュに舁き進めていく様子を見送り側から描いたこの作品は、パワーあふれるタッチでありながら繊細に筆が入れられており、山笠の迫力と魅力を感じとることができます。

この山笠の絵は、濃い青を全面に塗った後、山笠、舁き手を描き入れて、水法被の陰影な濃い色の部分と塗り重ねていき、最後に躍動する勢い水を描き入れていったそうです。

こちらも証券取引所ショーウインドウに展示された博多どんたくをモチーフにした「Hakata Dontaku」という作品。中洲の夜景をバックに橋を渡る花自動車を描いた作品です。
「賑やかな中洲の夜景を描きたかった」「やはりどんたくは花自動車ですね」と山下さん。ライトアップで光り輝く花自動車と、その光が川の水面にゆらぎ映る対比が幻想的な作品です。

黒田武士をモチーフにした作品は、「手を抜くと福岡の人達はすぐにわかってしまうから、日本号の描き込みはかなり頑張りました」と話すように、名槍日本号の螺鈿や刃の細かい模様もしっかり描写されています。

このシリーズの展示について「地元の人が喜んでくれる作品を並べてみました。山笠やどんたくは福岡市にしかないこの土地だけのモノなので、福岡の人がこれらの絵を見て喜んでもらえたら嬉しいです。」とのことです。

その他にも、ランナーや侍などをモチーフにした作品が数多く展示されています。
マスキングを使って刀の切れ味と軌道を表現したり、ランナーの空気の流れを黄色で表現したり、弧の形が生み出す力強さで躍動感を表現したり。
間近で見ると、山下さんが表現したかったテーマを、塗り重ねの厚みや、始点から終点まで一気に舁き入れた筆の勢いなどで、感じとることができます。

山下さんに聞くと、CGでデザインしイメージを固めた後、それを元に絵を描いていくハイブリッドな作風でこれらの絵を描いているとの事。
しかし、絵の具はCGで作ったイメージを”越えてくる”時もあり、その越えたイメージを再度CG取り込んで、さらなるクオリティを目指して描き上げたのが、展示されている作品達だそうです。

「まあ、たまに『あ、5手前のシンプルな時の方がピュアな魅力があった』と気づくときもあるんですけど(笑)」

個展初日の1月7日は雪が舞い散る寒い一日となりましたが、初日からたくさんの人がギャラリーを訪れ、すでに売約済みの作品も数多く出ており、作品の原画が見る事が出来るのはこの福岡個展の会期のみだけとなる作品も多々ありそうです。

ギャラリーにはカフェスタンドが併設されているので、コーヒーを飲みながら作品を見る事も可能との事。
しかも朝7時から夜20時まで一日13時間ギャラリーが開いているという、ギャラリーとしては珍しい営業形態です。出勤前に朝のコーヒーをカフェスタンドで飲んで山下さんの作品を楽しみ出勤する事もできます。

ギャラリーでは展示された作品のポストカードや、ポスター、Tシャツなども販売されています。

「音楽で例えると、CDで聴くのもいいんですが、ライブ会場で聞く音楽は皮膚で感じる音圧があり、これはCDじゃ経験できない体験です。
絵も実際に見てもらい目で「体験」してもらう事で、絵が持つ本当の魅力を感じてもらえたらと思っています」と山下さんは話してくれました。

現代絵師 山下良平氏の5年ぶりの福岡個展「HOPE」は、1月31日(日)まで開催されています。おいしいコーヒーと極上の絵を楽しみに、ぜひギャラリーへ足をお運びください。