博多中の体育祭まであと一週間。本番を一週間後に控え、博多中では体育祭の準備、そして博中山笠の準備が急ピッチで進められています。
昨日5月7日(金)は、生徒らが準備で大忙し。まずは先週組み上げた山笠台に生徒達が『八つ文字(やつもじ)』を掛けました。八つ文字とは、山笠台の脚に対角線上に縄を張り幾重にも巻いたもので、山舁き時に山笠台に掛かる衝撃を吸収して山台の破損を防ぐ重要な構造の一部です。
博多中の山笠のモットーは「山笠をやる以上はすべてやる」。通常山大工が準備するこの八文字掛けを、博多中では生徒達が手掛けます。自分たちの山笠を仁たちの手で組み立てる伝統を身をもって学ぶ授業です。
山笠台の足の上部と下部を対角線上に縄を緩めないで掛けていくため危険を伴います。山大工から最初に教わりアドバイスをもらって、しっかり技を盗んでいきます。「声を掛けながらね。縄に指がかかった状態で縄を締め上げたら、指がもげるから。必ず確認し合ってね」。ベテランの山大工のアドバイスには”遊び”の言葉はありません。生徒達も「はい!」と緊張感を含んだ返事をします。なにしろ、学んだことを次の班に伝えて教え、生徒達だけで八文字を完成させないといけませんので真剣です。
八文字掛けは1対の足に11周。男子生徒達は慎重に縄を掛け「うぉぉい!」と掛け声を掛けながら八文字を掛けていきました。
八文字掛けの順番を待つ班や終わった男子班は、学校周囲の草刈り作業。鎌を振るい、三輪車を転がして片付けていきました。
教室内では、女子生徒が山笠で男子生徒が使う手拭い(てのごい)と山笠飾りを作る作業を行っています。
まずは手拭生地にアイロンをかけて伸ばし、型を置いて染料を塗り、型抜きされた文字部分を染めていきます。
多色刷りのため、各パーツ毎に決められた班がそれぞれのパーツを染めて乾かし次の班に渡していきます。
部屋の片隅では、標題の筆耕が行われていました。静かに集中した女子生徒が、ゆっくりと慎重に筆の穂先を滑らせて行きます。
隣の部屋では、山笠飾りの絵が描かれていっています。ベニヤ板を組み合わせたキャンバスに、こちらも黙々と女子生徒が絵筆を躍らせていました。
明けて本日5月9日(土)は、グラウンドの横で棒締めが行われました。少々風が強い晴れの今日、地域の男性保護者で構成されている「はっぱの会」のメンバーが生徒の棒締めをサポートします。もちろん「はっぱの会」のメンバーは、大人の山笠に出ている人ばかり。生徒達は心強いバックアップを受けて作業を行います。
昨日行った八文字掛けも見事に完成していました。
おやし棒や縄の準備、鼻冠の処理など、着々と棒締めの準備が進められていきます。
棒締めに使う木槌も準備万端。一年間使わなかった木槌は乾いて隙間ができて頭が柄から抜けやすくなるため、二週間かけて水をじっくり吸わせてて膨張させ、抜けにくくさせるのです。
通路では、山舁きに使う舁き縄作りが行われていました。最初にはっぱの会の方が舁き縄作りの説明を行い、舁き縄作りが始まりました。
裸足になった状態で2本の縄を交差させながら、縄を撚っていきます。
撚り終えたら回転を加えて捻じりを取り、力いっぱい引っ張って真っすぐにし、撚り上がったこの縄にさらにもう一本加えて撚りあげ、丈夫な舁き縄を完成させていきます。舁き縄は山舁き時の命綱。そのためにも丈夫なものにしなくてはなりません。
しっかりとした舁き縄はピンと立つぐらいの丈夫な縄になります。出来上がった舁き縄を使って早速山舁きをシミュレーションする生徒も。
女子生徒も各持ち場で、それぞれの成すべきことを進め、山笠のために作業を進めていきます。
棒締めの現場では、「棒締めた!」の威勢の掛け声と合いの手の「棒締めた、棒締めた」の声。そして、縄の空気を抜くため振るわれる木槌の音が鳴り響きます。
男子生徒達はおやし棒(縄を締めるための締め上げ棒)を倒して棒を縄で締めあげます。数人の生徒が全体重をかけておやし棒を倒すと、縄と舁き棒がギリギリギリという音を立ててギッチリ締まっていきます。
時折「その声、腹の底から言ってるか?」「何もしてないならグラウンドを2周走ってこい」と山大工から厳しい声も。男子生徒達は気合を入れ直し、棒を締め上げていきます。
6本の舁き棒がしっかり山笠台に取り付けられたら、山笠台に枝折(天板)を取り付けます。
生徒達はお昼休みに。午後一番に山笠台と棒の締まり具合に不具合がないかを確認する試し舁き(テストラン)を行うため、大人たちは大急ぎで鼻縄(山笠台をコントロールする縄)を取り付けていきます。それを横目に、お昼休みを終え次々とグラウンドに集まってくる生徒達。「こら!ゆっくりこい!」と笑いながら大急ぎで鼻縄が取り付けられていきました。
出来上がった山笠台が大人たちの手で、グラウンドに運び出されます。いよいよ「試し舁き」の時間です。
グラウンドの向こう側にはぐるりと回る目印の「清道旗」と、応援の女子生徒が控えます。
出来上がった舁き縄を受け取ると、舁き棒にかけてスタンバイ。試し舁きは3年生だけのため、推進力を司る後押しがいません。全て生徒の力だけで山笠を持ち上げ走ることになります。
各パートで、山笠に出ている大人達からアドバイスが。次第に緊張感が増していきます。
台上がりを行うのは担当の先生たち。拍手と歓声に迎えられ、台上がりのねじねじ(役割を示すたすき)を付けて山笠台に上がるといよいよです。はっぱの会の方が時計を見ながら叫びました。「あと30秒!」
「5秒!」周りの大人たちが「3、2、1」とカウントダウンを行うと、「ヤー!」の掛け声で一番山笠の山笠台が駆け出しました。
が、清道の手前で舁き手がバランスを崩してしまいます。バランスを崩し右に傾いた山笠台は、その方向に大きく曲がってしまうハプニング。舁き山笠は舁き手全員が息と目的を合わせて初めて真っすぐに走ると言われていますが、このようなちょっとしたパワーバランスの乱れでコースを外れてしまう事でよく分かります。大人たちは「おいおい!」と大笑いしながら、生徒達の山舁きを温かく見守ります。
なんとか持ち直した一番山笠。清道を廻って舁き出し場所に戻ってくると、全員が拍手で迎えました。
次は二番山笠です。「ちゃんと清道を廻ってくるように」といじられると、どっと笑いが起きます。
舁き出しにタイミングを取れず少々手間取ったものの、無事清道をぐるっと廻って戻ってきました。山笠台も大過なく問題なさそうです。これで無事に試し舁きが終了しました。
2回連続で山舁きを行った生徒達。荒い呼吸を肩でしながら「肩、痛ぇ~」と笑いながら山舁きをした満足感に浸っていました。
清道旗を持ってた先生も戻ってきます。自分の周りを山笠が回るという”特等席”で山笠を見た先生。「最高ですね」と笑っていました。
忘れてはいけないのは、この作業は「授業」の一環である事。最後に終わりの会を開き、はっぱの会の方々に感謝の礼を行います。
最後に、山笠の授業らしく博多手一本で終わりの回は終了しました。
最後にはっぱの会からのプレゼントが。袋の中から登場したのは博多中の校章とカラーリングがされた提灯です。お汐井取りに出かける際、これまで先頭の生徒が掲げていた提灯は発泡スチロールでした。大人たちの粋なプレゼントに男子生徒は大喜び。高く掲げて皆に披露しました。
山笠台は一旦通路に運ばれ、本日の”授業”は無事終了。
来週日曜日(5/17)はいよいよ体育祭。皆で作り上げた山笠は、前日に飾付けなどを行い、いよいよ本番の時を迎えます。