山笠の見送りに赭熊(しゃぐま)(中央のふさふさが付いた槍状の飾り)の左右に差して飾る弓型の飾り物。魔除けの意味がある。
御神入れの神事の時に、山笠の無事奉納を祈って赭熊と共に見送りに飾りつけられる。神事の道具なので、舁き山笠が動く時は赭熊と共に外される。
古代中国では端午の節句に「鍾馗」が弓で悪疫や悪霊を退治するという言い伝えがあり、その言い伝えが日本に伝わり、正月に弓矢を使った儀式を行うことで「魔」を打ち払い、健康や豊作を願って、弓で的を射る「射礼」や「大射」などの儀式が行われたと言われている。現代でも神事として行われる「流鏑馬」もこの流れを汲んだ古式弓馬術と考えられている。
また、平安時代には宮中で病人が出ると、邪気を祓う為に天に向けて葦の矢を射る「追儺」、弦を鳴らす「鳴弦」が行われ、現代でも天皇家に御子がお生まれになると「鳴弦の儀」が行われている。
福岡県福津市の宮地嶽神社では、2月3日に古式に則り、桃枝で作った弓の弦を鳴らして邪気を祓い厄除招福を祈念する「鳴弦の儀」が行われており、日本全国の神社でも同様の儀式が行われている。
我々の生活でも正月に神社で「破魔矢」を頂き飾って家内安全を願うように、古来より弓矢には「邪気を祓い悪霊を退散させる」力があるとされており、見送りに飾る大弓にも同様の信仰があると考えられる。