山笠ナビ チャンネルYouTube

博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

お汐井取り(おしおいとり)

山笠参加者が祭りに際し心身を清めるために、石堂橋(博多区中呉服町)から筥崎宮の箱崎浜(東区)まで、お清めのお汐井(真砂)を取りに行く行事。
お汐井取りは山笠期間中2回あり、山笠期間初日の7月1日は当番町のみがお汐井取りを行う『当番町お汐井取り』、7月9日の全ての参加者が行う『全町お汐井取り』
心身を清める行事であるが、7月10日から始まる山舁きに向けての”足馴らし”としての意味合いもあるとも言われている。

表記としては『お汐井取り』ではあるが、山笠ガイドブックや山笠記念誌などでは『お汐井とり』という表記で統一されている。

参加者は皆山舁き姿となり(役員は長法被も肩にかける流もある)、集合時間に山小屋前へ集合、手打ちを行う。
掛け声ともに弓張提灯(笹竹に提灯をつけたもの)を先頭に石堂橋に向かう。順番は流れによって異なるが、先頭を当番町が務め、最後尾は受取町(翌年度の当番町)が務める流もある。
時間が来たら、石堂橋から都市高速道路の下を横切って出発。約6キロの「お汐井道」と呼ばれる道程を「オッショイ」の掛け声を上げながら小走りで箱崎浜まで駆けていく。

箱崎浜に到着した参加者は、箱崎浜から沖に向かって二礼二拍一礼を行い、浜のお汐井(清めの真砂)を「お汐井枡」や「てぼ」にすくい取って持ち帰る。
干潮の場合は砂浜に降りてお汐井をすくう人が多いが、潮が満ちている時は浜に積んでいるお汐井をすくう事が多い。中にはそれでも海に飛びこんで胸上まで漬かりながら潜って真砂をすくう強者もおり、砂をすくった升やてぼを海中から突き上げると辺り一帯がどっと沸く。

ちなみに、報道側は海に入る人に備えて、カメラマンは胸まである長靴(胴付水中長靴)を着用してスタンバイ、いざとなった時は海中に降りてベストショットを狙う男気のある局もあったりする。
また、箱崎浜でシャッターチャンスを待ち構えているカメラマン達も、その背後は海である。バランスを崩せば、こちらも愛機と共に背中から海の中へダイブ!という危険と”隣り合わせ””背中合わせ”である。たまに脚立を海の中に落としてしまい、”あぁぁぁ・・・”と悲観に暮れている人も見かけることも。
このように、報道もカメラマンも、箱崎浜ではかなりスリルあるひと時を過ごしているのである。

お汐井取りは、山笠に初参加する乳児・幼児のデビューの場に選ばれる事が多い。おむつの上に化粧まわしを着用した幼児を抱っこした父親が、子供と共に箱崎浜で参拝する姿は実にほほえましく、カメラマンの絶好の被写体として撮影される事が多い。

箱崎浜に参拝した後は、逆側にある筥崎宮に参拝。お祓いを受けながら祭りの安全を祈願する。
しばしの休止の後、今度は櫛田神社まで列を作って参拝に向かう。櫛田神社に到着すると「ヤー!」という掛け声とともに一気に楼門をくぐり、境内に駆け込み神職が振る紙垂の下で無事奉納を祈願する。
七番山笠が櫛田神社に到着する時は、およそ午後7時半頃。辺りも薄暗くなり、男たちが手にする提灯の灯りが道中を凛とした空気に変えていく。この提灯の風景が実に美しい。

お汐井の使用方法

お汐井取りで取ってきた「お汐井」は「清め」の意味がある。舁き手は体や山笠台に振り掛けたり、お汐井を入れた升を舁き山に吊るすなどして使用する。いわゆる「お清めの塩」と同じような使い方であり、博多では山笠に出る時はもちろんだが、普段から様々な場面で清めの塩と同じように使用される。

櫛田神社や筥崎宮、東区志賀島にある志賀海神社では、境内に清めの砂が入った箱が用意されており、清めの砂を体に振りかけてから拝礼に向かう。

なお、櫛田神社と筥崎宮は「お汐井」で、志賀海神社では「お潮井」という文字が使われている。これは朝すくった真砂は「お潮井」、夕方の真砂は「お汐井」と定義されているためである。

中洲流の7/1の当番町お汐井取り

中洲流は、7月1日の夕方から行う当番町お汐井取りには唯一参加せず、代わりに、役員のみが7月1日の早朝に箱崎浜を訪れ参拝する形を取っている。これは、1953年(昭和28年)に九州・山口を襲った大雨による大水害が関係する。

これは昭和28(1953)年、6月25日から6月29日にかけて九州地方北部を襲った集中豪雨による「昭和28年西日本水害」が発生。このためこの年の山笠行事は7/10のお汐井取り、7/11の朝山、7/12追い山ならし、7/15追い山以外の行事はすべて自粛となった。それを受けて、中洲流は7月1日の当番町お汐井取りを早朝に役員だけで行った経緯があり、それ以来中洲流の習わしとして現在も続いている。

アマチュアカメラマンのマナー問題

行事の進行スピードがゆっくりで被写体が多いこの行事は、カメラを趣味とするアマチュアカメラマンの絶好のシャッターチャンス行事で、特に箱崎浜は山笠でも有数の撮影スポットとなっている。
ただ、近年熱くなりすぎてる感があり、フレームに入った人への罵倒や小競り合い、山笠参加者を取り囲むように撮影してしまい結果として拝礼の邪魔になってしまったり、時には自分が撮影したいイメージに合わせたポーズや姿勢のリクエストなど、少々目に余る光景が多くなってきている。

一部の人からは「空気が悪い」とクレームが上がるほどで、近年では小競り合いの末、突き飛ばして現場から逃走する・・・などの事案も発生しており、箱崎浜でのマナー問題対策がここ近年重要懸案として高まりつつある。
撮影はぜひ楽しんでもらいたいが、マナーは重々に守ってもらいたいところである。

お汐井取りの動画

61