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博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

山小屋(やまごや)

山笠(舁き山笠・飾り山笠)を納める小屋。舁き山笠は山小屋を出発し、山小屋に戻ってくる。
高さは舁き山笠、飾り山笠で異なっており、舁き山笠の山小屋の高さは約10メートル、飾り山は約13メートル。最も高いのは博多駅商店連合会の山小屋で、約14メートルになる。
小屋の前後には壁がなく、横側にのみ壁が備え付けられている。骨組みの主な素材は鉄骨。その昔は丸太で組み上げられていた。
外観の形状はどの流もほぼ同じだが、屋根や壁のディテール、素材等は流や飾り山によって異なっている。
山小屋が建設が始まって約2~3日で完成する。山小屋が完成した後に棒締め、飾付けの行事を行うスケジュールに移る事が多い。

山小屋の柱部分(柱囲い)には、舁き山笠の山小屋は、朱書きで「奉納」、その後墨書きで「○番山笠 ○○流」と記載するようになっている。なお、この場所には広告等は入れてはいけない決まりとなっている。

山小屋は、表側を櫛田神社の方向(もしくは東側)に建てられるのが習わしで、表から出発した舁き山笠は見送りから戻ってきて、表を合わせて山笠は据えられる。コースや場所の問題で、表の方から戻ってきても、一旦山小屋内を通過して見送り側で引き回したうえで再び山小屋に入らないといけない。

基本的に、空いている土地や広く空いたスペース、歩道などに立てられることが多いが、古来より山小屋は道路上に建てる伝統があり、今もその年の当番町次第では道路上に山小屋が建てられる。特に、西流は流区域が追い山笠コースと重なるため、西流の山小屋が道路上に作られた年は他の流は西流の山小屋下を通過していく事になり、旧西町筋に建つ山小屋潜りは山笠の見せ場の一つとなっている。

飾り山笠は、ショッピングモール内などに飾り山笠を立てる場所が多いため、山小屋を建てない山笠が多い。
また、近年は自然災害からの安全対策の観点から室内に移動する飾り山笠も増えており、山小屋を有する飾り山笠は一時期より減っている。

なお、土居流の上新川端町は、町の区域が上川端商店街と同じであるため、当番町を務める年は山小屋の屋根をアーケードに吊るしてその場を山小屋とするようにしており、上川端商店街の隣の川端商店街を町の区域とする大黒流の川中は、当番町を務める年はアーケード内に山小屋を建設する。

最も大きい山小屋は博多駅商店連合会の山小屋で、2011年(平成23年)JR博多駅のリニューアルと共に山小屋もリニューアルした。高さ13.5メートル、 最大幅6メートル、奥行き 10.8メートルもあり、山小屋の柱には8本の杉丸太が使われており、梁なども杉の材木が使われている。博多シティの空中回廊から見下ろすことも意識したという構造となっている。
小屋の横側の壁は3枚の幕で構成されており、左右の幕ははシースルー状の網が採用されている。そのため遠目から見るとツートーンカラーの小屋に見え、遠目から見るとかなりのインパクトがある。

山小屋がなくなった飾り山笠

近年、大型台風、線状降水帯による豪雨などが相次ぎ、想定外の風水害が起こる事が多くなった。平成29(2017)年、平成30(2018)年は、2年連続で山笠期間に台風が博多を襲った。

特に、2018年(平成30年)6月29日に発生した台風7号は、7月3日に九州北部へ最接近。かなり強い勢力になると予想されたため、博多では7月2日~3日午後、最大の警戒態勢を敷いて慌ただしく台風対策を行った。博多リバレインや天神一丁目は、山小屋の幕を風を通す網に掛け替えた上で、補強のロープを掛けるなど行い、キャナルシティ博多も山笠周辺を立ち入り禁止にした上で山笠台を厳重に固定した。中洲流は山小屋をクレーン車で押さえ付け、上川端商店街内に舁き山笠を建てた土居流は、万が一に備えアーケードに吊るした山小屋の屋根を下ろすなど対策を行った。
3日午後6時頃になると、最大風速20メートルを超える強風が吹き荒れ、各山小屋では関係者が安全を確保するため奔走。博多リバレインの山小屋は暴風で山小屋がずれ動く事態に。「山小屋が吹き飛んで人や車に直撃したら博多にはおられん」と暴風雨の中、関係者が腕力で山小屋を押さえ続け、山小屋の追加補強の作業を懸命に行った。

これがきっかけとなり、近年大規模な自然災害が起きやすい時世に対して安全対策を考えざるを得なくなり、平成31(2019)年、大博通り沿いに山小屋を建てていた東流は呉服町ビジネスセンターの1階オープンスペースに、明治通り沿いに山小屋を建てていた博多リバレインはホテルオークラと博多リバレインの間のアーケード下に、それぞれ飾り山笠を移す苦渋の決断を行った。これにより山小屋は建てられなくなった。

また、2022年(令和4年)には福岡ドームの飾り山笠も、同様の理由で(特に海沿いであるため台風の時の安全面や、日陰がない場所であるため近年の暑さ対策として)大型商業施設のMARK IS 福岡ももち内に飾り山笠を移し、山小屋を建てなくなった。

千代流もコロナ禍以降飾り山笠を休止していることで、ここ近年で山小屋が4つ減ってしまったことになる。

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