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博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

「雲」/「空」(くも/そら)

福岡都市高速の高架下に取り付けられている謎のパネル。
取り付けられている場所は、石堂大橋石堂橋西門橋の3箇所。
なお、石堂大橋と石堂橋は博多側を向けられており、西門橋の頭は箱崎側に向けられているが、理由は不明。

これは、高架が開通した1986年(昭和61年)に取り付けられたもの。
千代流の舁き山笠が櫛田神社に向かう際、『御神体』である舁き山笠が高架下を潜った時、天と地の間を遮断してはいけないとして取り付けられた。
このプレートがあるルートから千代流は博多部へ舁き入れていく事になっている。

この「雲」を飾る風習は高架下だけに生み出された風習でなく、古来から神棚を祀る際、神棚の上に人が住まう階層があると「神棚を踏む」ことになり神様に対して畏れ多いと考えられたため、神棚の上に「雲」や「天」などの文字を供えて「神棚の上には雲しかありません」と示す習わしがある。高架下のプレートは、この習わしを採用したものである。

山笠での「雲」の習わしは、2019年より呉服町ビジネスセンタービルの1階エントランスに飾られるようになった東流の飾り山笠も、同様の理由で飾り付けの際に「雲」と書かれた紙が天井に貼られている。
※山笠の真上の階上に人が居るか居ないかがポイントなので、博多駅、博多リバレイン、ソラリアなどの飾り山笠には「雲」は存在しない。

知る人ぞ知るトリビアで、2014年頃は博多区役所が運営する「博多の魅力」でのボランティアガイドブログにて紹介されたぐらいだったが、大きく注目されたのは2021年6月20日に放送されたTVQテレビ九州「ブルーリバーの望むところだ」で「福岡都市高速の高架に謎の“漢字一文字プレート”が…地元の人も知らない驚きの目的とは?」として大きく取り上げられ、それ以降福岡地元メディアでよく見る”ネタ”となった。

福岡北九州高速道路公社が発刊した『福岡北九州高速道路公社40年史』にもこのプレートについての記載があり、

西門橋交差点の上空に設置された「雲」という板は、博多祇園山笠が深く関与している。元々、この地域がある千代地区は「千代流」が存在し、高架橋が架かることで「開通すると人や車が山笠(=神さま)の上を走るようになって、罰当たりだ」という横槍が入った。これに対処するため、仏壇や神棚の上に「空」「雲」「天」といった、上空には何も無いという意味合いを込めた漢字の板を設置して事なきを得ている(地元はそれでOKだったらしい)。誰のアイデアなのかは不明
(寄稿:山本栄治氏)

と、記載されている。

「誰のアイデアなのかは不明」となっていたが、2024年6月16日放送のFBS福岡放送「地元検証バラエティ 福岡くん。」での「福岡都市高速の裏側に書かれた謎の「雲」の文字を徹底調査!」での調査において、千代流の山大工も務めていた藤本稔氏が、福岡北九州高速道路公社との交渉の席で「跳ね橋案」「山笠の間は通行止め案」などを提案するも却下され、このプレートを取り付ける案を出したところ採用されたものと判明した。

なお、この「雲」のプレートによる対応は、香椎参道の国道3号博多バイパス下にもあり、香椎宮の大祭で神輿を通すため「雲」のプレートが付けられている。

近年ではキャナルシティ博多でも「雲」のプレートが取り付けられるようになった。

キャナルシティ博多の「雲」は、2023年から取り付けられるようになったとの事で、飾り山笠の上空ではなく山笠を見下ろす形にあるフロア側の壁に取り付けられている。

また、7月12日の東流の他流舁きに於て、JR博多駅表敬で舁き入れる際、博多信三井ビル付近と博多バスセンターを繋ぐ博多駅歩行者連絡橋の下を舁き山笠が通過するため、この時間だけ連絡橋には「雲」の紙が貼られる。

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