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博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

上川端通(かみかわばたとおり)

上川端通は、飾り山笠でありながら7月12日と15日に櫛田入りを奉納する「動」の飾り山笠、通称『走る飾り山笠』を奉納している。番付は唯一固定された「八番山笠」。七流が櫛田入りを終えた後に、上川端通の櫛田入りが行われる。
なお、櫛田入りを行うが飾り山笠であるので、流の一つには数えない。そのため「上川端流」とは呼ばない。(※1967年(昭和42年)舁き山笠を奉納したので上川端流が作られ、舁き山笠を奉納する上川端流と飾り山笠を奉納する上川端通が存在した。ただし2本が存在したのはこの年だけで、翌年より飾り山の奉納だけとなった)

奉納される飾り山は高さ12m・重さ2トンもあり、この巨大な山笠を舁くには多くの舁き手が必要なので、舁き棒は舁き山笠よりも約1.8メートル長い約7・2メートルの棒が使われている。なお、舁き棒の重さは1本約80キロ。

現在は、上川端商店街の商店主を中心に、飾り山笠からキャナルシティ博多、福岡ドーム、博多駅商店連合会。加勢団体として福岡県庁、福岡市役所、福岡中央銀行、熊本銀行、コカ・コーラボトラーズ、山門青年会議所、小郡市役所、九州大学(アメリカンフットボール部、サイクリング同好会、ラグビー部、各部 OB)及び個人の方々総勢350~400人で構成されている。

7月12日と15日は、櫛田入りを行ったあと国体通りに出て大博通りへ。東長寺前の清道旗を1周回った後、そのまま大博通りを北上し、冷泉通りから左折し川端商店街のアーケードに戻る。

上川端商店街

川端商店街は博多で最初に栄えた商業の町にある140年以上の歴史がある商店街で、博多川沿いに北西から南東におよそ400メートルの長さがあり、開閉可能な全蓋式アーケードを有している。キャナルシティ博多と博多リバレインの2つの大型商業施設を繋いでおり、キャナルシティ博多側を出るとすぐに櫛田神社と櫛田神社前駅があるため、山笠のお膝元のような商店街でもある。

川端商店街は、山笠的には博多リバレイン側から中洲のであい橋通りが交差するところ(紳士服のタケハラ/はかたやラーメン)までが「川端中央街」(大黒流)で、そこからキャナルシティ博多川までが「上川端通」(土居流)となっている。なお川端中央街の旧町名は「川中」で、上川端通は「上新川端町」。

なお、キャナルシティ側の入口は、山笠のイラストが掲げられており、舁き棒をイメージしたようなアーチ形のひさしのデザインが施されている。

上川端通の歴史

上川端通の飾り山笠は、1964年(昭和39年)に初めて飾り山笠が建てられた。
上新川端町は当初から『動く飾り山笠』として建てられた飾り山笠である。その昔は飾り山笠のサイズで山笠が行われていたのだが、明治43年、福岡市内に電車が走り始めた事でその架線が山舁きの邪魔になり、大正の初めに舁き山笠と飾り山笠が分離した。しかし、往年の高い山笠を舁き廻りたいという夢を抱き続けた上新川端町の人々「走る飾り山笠」を誕生させた。

上新川端町の半田新一氏は、人形師の原田嘉平師と共に、どのようにしたらアーケードから飾り山笠を出せるか、電線を切らずに動かせるかを思案。そこで考え出されたのは、櫛田神社までの途中は飾り山笠の柱を人の手で1メートル下げ、人形も1メートルだけ取り外して移動する。そして櫛田神社に入るときそれを元に戻し再び壮麗な飾り山笠にして、櫛田神社に入って行くという「からくり」を立案。ここから通称「半田山」と呼ばれる飾り山笠が出来上がることになる。

初めて走る飾り山笠の案を持ち込んだところ、『櫛田入りには博多の伝統的な格式がある。こういう商店街の宣伝臭の強いヤマが追い山に出ることはならん。太鼓もたたく必要はなか。どうしてもというなら、追い山が終わって1~2時間して入って来い』と振興会からとても怒られたという。話し合いを重ね神社側の了解もつき、流各町の協力も得ていよいよ実現へ進む。
初めての試みなので、山笠が動くかのテストを何度もやった様子が記録に残っており、毎夜10時に路上で舁き廻して何ら事故なくスムーズに動くのを確認しているが『櫛田入り本番ともなると競い過ぎて横倒しになりはしないかなど町責任者古老たちもいささか頭を痛めております。』と心配の種は尽きなかったようだ。

上川端通の”デビュー”は追い山笠馴らしの櫛田入りのみ。順番は全ての舁き山笠の櫛田入りが終わった後の九番山笠に番付された。
全ての舁き山笠が櫛田入りを終えたのに、観衆はだれもその場を動かなかったという所から、上川場通の注目度が高かったことがうかがい知れる。
1964年7月15日午後5時10分、高さ6.4メートル、重さ1500キロの巨大な体躯を揺らしながら走る姿に見物客から大きなどよめきが起こったという。清道一周112メートルほど走っただけだったが、沿道の年寄り達の中には『明治の時に終わったヤマを昭和の時代に再び見ることができるとは・・・』と涙を流した方もいたらしい。

1966年(昭和41年)からは、13日の集団山笠見せ、15日の追い山笠も参加するようになり、山笠のひとつの名物になった。

1983年(昭和58年)「ことしは経費、人手の面から中止せざるを得ない」として櫛田入りを中断したが、1984年(昭和59年)に関係者の尽力で復活した。

2005年(平成17年) 福岡ドームで行われたねんりんピックふくおか2005の開会式に、七流に加え八番山笠上川端通も参加した。

2017年(平成29年)には見送りに「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が飾られ、伝統の祭りと世界規模の人気映画のコラボに、国内外で大きく報道された。

2024年(令和6年)には創立60周年となり、”還暦”を迎えることになる。

伸縮する山笠

上川端通は、2023年現在では3段階の伸縮機能が付いており、山笠台の中に人が入って操作を行っている(山笠の伸縮、スモークの発射などを担当している)。1段目は飾り上部、2段階目は天神(てんしん)、3段階目は二引の旗となっている。山笠ナビ的には3段階目までを伸ばした姿を「完全体」と呼んでいる。

矢切(骨組み)は当然ながら特注品。アーケードの天井にぶつからないように、上1/4ぐらいがスライド伸縮するようになっており、棒締めが行われた日の午後に矢切が山笠台に立てられる。

1964年(昭和39年)の初登場時は、「飾り山笠の柱を人の手で1メートル下げ、人形も1メートルだけ取り外す」からくりだったが、チェーンブロックを使った「からくり」が導入され、引き上げの労力が大幅に軽減された。ただ、チェーンブロックとはいえ狭いスペースでの人力での引き上げなので少々時間を要していた。

2019年(令和元年)からチェーンブロックが電動のチェーンブロックになり、伸縮の時間が大幅に短縮されるようになった。電動チェーンブロックになった事で少々重くなったが大丈夫か?と聞いたら「ここまで来たら大差ない」とのこと。

基本アーケードに収められている時は縮んだ状態で展示されていることが多いのだが、天気のよい7月1日の御神入れの日は、アーケードの天井を開けて3段階目まで伸ばして神事を行う。また、天気がよく風のない日もたまに3段階目まで伸ばして展示されることもある。

なお、7月12日と15日は、縮めた状態でアーケードを出発。冷泉公園横に山列入りすると一旦最大限に伸ばして据える。櫛田入りが始まると一旦縮め、土居通りに入ったら再度伸ばす。櫛田入りを終えた後、国体道路で一旦縮め、大博通りに出る前に伸ばす。大博通りを北上し、冷泉通りに入ったら縮め、アーケードに戻る・・・と伸縮を何度も行っている。

スモーク

上川端通の飾り山笠の代名詞は、山笠飾りから噴出されるスモークである。
スモークは1991年(平成3年)見送りの標題「ゴジラVSキングギドラ」のゴジラから初めてスモークが噴出された。

スモークの元となるボンベは山笠台の台足に取り付けられており、人力によるバルブのON/OFFで噴出されるようになっている。
7月12日まで使用される事がないため、ボンベが凍結等を起こさないようにテストを兼ねて時折商店街内で噴出される事があり、そのシーンに出会った買い物客はとても驚く。

創立50周年を迎えた2014年(平成26年)の追い山笠の櫛田入りでは、スモークと共に見送りの「花咲爺」の花咲爺さんからピンク色の紙吹雪が噴出され、大喝采を浴びた。
なお、この紙吹雪に使われた紙は水溶性であり、神社に迷惑が掛からない、環境に配慮された素材が使われていた。

その他の「からくり」

上記の他、上川端通の飾り山笠は、様々なギミックが施されることが多い。

櫛田入りの際、大きく茂った櫛田の銀杏の枝葉に、二引の旗が当たることが多く、一度折れてしまった事がある事から、二引の接続部分はバネ仕掛けになっており、枝に二引が引っかかってもしなって枝葉をそらすような仕組みが施されている。

また2017年(平成29年)の見送り「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」の飾りにLEDが仕込まれ、追い山笠の山列入りの時間にライトオン。ライトセーバーとC-3PO、R2-D2、BB-8の目が暗闇の中、煌々と光る姿が話題を呼んだ。

このように、上川端通は、様々なギミックが施されていることから、「からくり山」とも呼ばれる事もある。

毎日移動する飾り山笠

上川端通の飾り山笠は「走る飾り山笠」であるが、実は「毎日」動いいている。
というのも、15日間、同じ場所に置くと店舗側から苦情が来るため。商店街のアーケードの下を、毎日移動して据えられている。
店舗の方々の声によると、近くの店からは「邪魔になる」、遠くの店からは「人が来ない」。あってもなくても苦情になるのが、なかなか難しいところである。
なお、飾り付けの時は熊本銀行に据えられ、御神入れの日は総務の店舗前に据えられるのが習わしとなっている。

7月15日以降の八番山笠

上川端通の山笠は15日の追い山笠が終ると、一旦飾りが解かれるが、約一週間後に上川端商店街にある川端ぜんざい広場に、終わったばかりの飾り山笠が再度作り上げられ、翌年7月14日までの1年間公開される。川端ぜんざい(夏はかき氷)を食べながら、間近で山笠観賞が出来るとして、評判が高く観光客の姿が多い。
なお、展示されている昨年の飾りは、7月14日の午後9時より山解きが行われ、わずか一週間程度だが飾りがないぜんざい広場を味わえる。

山小屋の場所

上川端通の長法被

長法被

上新川端町

水法被

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