棒洗いで清めた舁き棒を山笠台に取り付ける行事。
丈夫な麻縄だけで「おやし棒」と呼ばれる棒をテコのように使って力いっぱい山笠台に締め付ける。釘などの止める道具は一本も使われない。
縄を締める際には棒締めを行っている者が「棒締めたー棒締めたー」と掛け声を掛けるのが特徴。
当番町を中心に棒締めを行う流が多い(※流によって異なる)が、飾り山笠は参加者総出で行う事が多い。
7月1日より飾り山笠の一般公開が始まるため、飾り山笠が先に行う事が多い。6月の山笠準備期間に入り、棒洗いと小屋入り(または地鎮祭)を行った後に、この棒締めが行われる事がほとんど。日を改めて行事を進める事が多いが、棒洗い(→小屋入り)→棒締め(→試し舁き)と行事を一気に終わらせる流や飾り山もある。
古来は、7月1日を迎えてから行うのが習わしだったらしいが、1952年(昭和27年)の新聞記事によると、この年初めて舁き山笠に参加した岡流の当番町・瓦町が「他に負けないなものを」と6月17日に行った事が話題になっている。
棒締めは、まず山笠台の棒ぐり(半円状にくり抜かれた棒を据える穴)に6本の舁き棒を乗せた後、棒鼻が一直線になる様に調整。その後、棒締めの途中で棒がずれないように木材と縄で固定する。
棒を締める太い麻縄は表と見送りそれぞれ1本ずつ使われる。つまり、6本の棒をたった1本だけで縛り上げることになる。麻縄の長さは50m程。二重にしてそれぞれ右肩と左肩に使う。
縄を棒に掛ける前に、若手はまず縄を真っすぐに引っ張り、縄のたるみやねじれをとる。真っすぐになった麻縄を、山大工が三番棒(真ん中の2本)に掛け、余った縄は絡まないように若手が引っ張る。
おやし棒を山笠台のへの字に引っかけ、縄を絡ませる。その際、締め上げる時に縄が緩まない様、木槌の柄にも絡ませて搾り上げる。
棒を固定したら、木槌を持った若手が、山笠台の上、山笠台の中、舁き棒の下に入る。
準備が整ったら、山大工の合図と共に、表と見送りが同時におやし棒が引き倒され、テコの原理で縄を締め上げる。
その際、縄を木槌で叩いて縄に含まれた空気を抜いていく。こうする事で、隙間なく固く締め上げることができる。木槌で縄を叩く際は、縄が締まっていく進行方向に向かって流すように叩くのが基本。この木槌を振る際に「棒締めた、棒締めた」の掛け声をかける。
なお、棒締めのスタートとなる一投目は、総務が山笠台に上がり、最初の掛け声を掛けて槌を振るう事が多い。
縄をかける山大工、木槌で縄を叩く人、縄を引っ張る人、おやし棒を倒す人と、多くの人がこの棒締めに関わり、一つの山笠台を作り上げていく。
麻縄を締め上げるたびに縄と棒が締まってきしむギリギリという音が立つ。その縄を叩く木槌の音、そして「棒締めた」の掛け声。この三種の音があたりに響くと、博多の人は山笠の時期が到来したと感じる人が多い。
単にガチガチに締め上げるのではなく、山笠台にかかる衝撃を逃すためにある程度緩みを持たせながら締めるとの事で、その辺りの加減は山大工の熟練の指示が重要となる。
三番棒→二番棒→一番棒と順番に締めあげていき、一番棒を締め上げる余りの部分を台足に幾重に巻き付けて固定。その後もう片方の棒締めを行う。
片側を締め上げるのはおよそ40分~50分。山笠準備期間が始まった時は山大工も一年ぶりなので時間がかかるそうだが、何度もやるうちにコツを思い出し、7月手前になると早い時は30分~40分で終わる時もある。
棒締めが終わりに近づくと、一番棒の棒鼻に鼻縄が取り付けられ棒締めが終ったら、火打ちの番線張りを行い、枝折を乗せて、ようやく山笠台が完成する。
釘を一本も使わない山笠台の出来上がりは、まさに伝統工芸品でありアートといっても過言ではない。
棒締めが終わった後は、棒の締まり具合を確認するために「試し舁き」が行われる。