直会(なおらい)
本来は、神事の最後に参加者一同で神前に供えた御饌御酒を戴く事。
古くから、神への供物を頂く事で、神々の恩頼を戴くことができると考えられてきた。この神人共食により神と人とが一体となる事が根本的意義であると言われており、この直会が簡略化され、神前で御酒を戴く儀礼に転化したと言われている。
なお、お祭の準備から祭典を経て祭典後の直会を以て全ての行事が終了し日常に戻るという事から「なおりあい=直会」という説もある。
山笠においては、神事や行事後に各町の詰所で行われ、神の加護を期待した会食でもありながら、町内の結束を強める意味合いが強い。
直会では、まず長老やベテランが先に箸を付け、若手はビールや日本酒などを注いで回る。これが済んで、初めて若手の順番となる。山笠は危険を伴う祭である。そのため、参加者には「秩序」が求められる。直会の場は山笠の上下関係などが教えられていく場になっている。
なお、参加した子供達も別テーブルでこの直会の場に参加する。
戦前は日本酒に昆布、スルメ、青梅など簡素な物だったが、現在はビール、焼酎、ハイボール、からあげ、刺身、煮物などメニューが豊富になっている。
これらを用意するのが町のごりょんさん達で、ごりょんさん内で山笠行事が始まる前に、行事ごとに事前に相談して担当の日時や献立を決めている町もある。一方で、ごりょんさんに迷惑は掛けれられないとオードブルを購入して用意している町もある。
最近ではキッチンカーがやってくる町もあるらしく、この直会では参加者だけでなくごりょんさん達にも振舞われ、ごりょんさん達もこのキッチンカーが来る日を楽しみにしているという。
なお、博多では(というか、山笠に参加している人達は)、山笠期間外でも、地域のイベント準備やイベント終了後、大掃除を行った後・・・などなど、事後の食事会や打ち上げを「直会」と呼ぶ事が多い。
「町」によって異なる直会
直会といっても単なる「会食」ではなく、各流や各町に長年受け継がれるしきたりや恒例のメニューが多数存在している。
- 当然ながら山笠の禁忌であるキュウリは直会のメニューに登場しない。直会用に注文したオードブルに、この時期のキュウリの話を知らないスタッフが入れてしまって、大クレームになった・・・という逸話もある。
初めて直会にキュウリが登場するのは15日追い山笠の後から。山笠が終わったという事でキュウリのなますなどの料理が直会に出される町もあり、これを食べて「山笠が終わったなぁ・・・」と実感する人が多いらしい。
- 土居流では、朝山の後の直会では、テーブルを向かい合った二人が一本のちくわを半分にねじ切って食べるという「ねじ切り」という習わしがある。
- 八番山笠上川端通では、「集団山見せ」(7月13日)の後の直会では、男の手料理「そうめん食い」を行う。戦前に地元の町内で始まった。祭り期間中は女性たちが店を切り盛りするため、簡単な手料理として定着したという。「役員も一般も同じテーブルで食べて心が一つになる」効果もある。これは上記の「ねじ切り」と同様であるところが興味深い。
- 恵比須流の一部の町では、期間中の直会で食する肉は鶏肉だけという町がある。お寺が多い町の習わしらしく、仏教では4本足の豚・牛は食べてはいけない・・・という理由があるためだそうで、直会に関するエピソードでは結構有名なエピソードとして紹介される事が多い・・・と思っていたが、恵比須流の他町の人に聞いたら「え?そうなんですか?初めて知った・・・」と驚かれたので、同じ流でもこの習わしがない&知らない人が多い事が近年分かった、というか体験した。近年は色々な”禁忌”が解けてきているそうだが、それでもこの町のごりょんさんは直会の献立に頭を毎年ひねりまくっているらしい。
- 東流の上東町では、山笠期間の早朝から男達がぜんざいを手作りして町内の家々に配るという習わしがあり、今も続いている。白玉の作り方にかなりのこだわりがあるらしく、ベテランの人たちが張り切って白玉作りを行っているらしい。(※なお、ぜんざいについては、流舁き後に食べるという町が多数あるとの情報あり)
- 土居流の上新川端は直会が存在しない。町の場所が川端商店街内という事から「アーケード内で飲み食いするのはいかがなものか。そんな暇あったら商売に精を出そう」ということで、缶ビール一杯で直会は終了するという。