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博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

標題(ひょうだい)

舁き山笠、飾り山笠の題、タイトルの事。転じてその山笠の飾りのテーマ、モチーフも指す。
その昔は『外題げだい』と呼ばれていた時期もある。時折『表題』という字を見かけるが『標題』が正しい。
標題は、流や総務が決めたりする事が多いが、古文に詳しい神社の神職、お寺の住職などに考えてもらうケースも多い。

標題の決まり事

標題は、文字数を3、5、7・・・と奇数で表現するのが慣わしとなっている。

#「土蜘蛛」(3文字)(1949年博多五町 他)
#「長政博多入」(5文字)(2011年西流)
#「武士向月祈命運」(7文字)(2011年東流)
#「剣撃大蛇素戔嗚尊誉」(9文字)(2022年ソラリア)

標題の最後に「勲(~之武勲)」「誉」の文字が入った標題が目立つのは、これらの短い奇数文字を足すことで、偶数標題を奇数文字にする事が出来るため。

#「季長元寇之武勲」(2011年天神一丁目)
#「天下布武」(2004年中洲流 他)
#「伊賀越鍵屋辻」(1982年上川端通)

「文字数を3、5、7・・・と奇数で表現するのが慣わし」とあるが、1文字でももちろん可能である。
ただ1文字で飾りのイメージを伝えるのは難しいため、総会での申し渡しでも「三文字、五文字・・・」と説明される事が多い。戦後で調べても2004年上川端通、2010年キャナルシティ博多飾り山笠、2024年の千代流舁き山笠の3回しか登場していないレア標題である。

#「しばらく」(2004年上川端通、2010年キャナルシティ博多)
#「とどろき」(2024年千代流)

題を付ける人の頭を悩ませるのが、飾り山笠の見送りに多く登場するようになったテレビアニメやテレビ番組などのタイトル。作品イメージから武者物の標題のように「勲」や「誉」の文字を入れるのが難しく、偶数の場合は「ー」を消したり「!」を加えたり、上記のように漢字一文字を多して調整するなどして文字数を合わせている。

#「ワンピース」(5文字)(2002年博多駅商店連合会)
#「アニメ美食屋トリコ」(6文字+3文字)(2011年新天町)
(「美食屋トリコ」だと偶数のため、「アニメ」を足して奇数に)
#「ちびまる子ちゃん! 」(8文字+1文字)(2001年博多駅商店連合会)
(「ちびまる子ちゃん」だと偶数のため、「!」を足して奇数に)
#「闘スラムダンク」(6文字+1文字)(1994年 川端中央街)
(「スラムダンク」だと偶数のため、「闘」を足して奇数に。なお標題の読みは「たたかうすらむだんく」)
#「ダンガドA」(5文字)(1977年博多駅商店連合会)
(本来は「ダンガードA」だが文字数が偶数のため、伸ばし棒をカットし5文字に収めている)

「。」や「・」などといった記号は、流などによってカウントする/しないが分かれる。

#「キング・コングの逆襲」(記号を入れると10文字)(1967年新天町)
#「ウルトラマン’80」(記号を入れると9文字)(1980年新天町)
#「つくろう、ユニークな未来。」(記号をすべて入れると13文字)(2024年川端中央街)
#「時代劇大江戸弁護人・走る!」(記号をすべて入れると13文字)(1996年川端中央街)

また、あまりいいイメージがない文字だったり、対応にかなり難しい文字は、代わりの字があてられる特殊なパターンもある。

#「ハンターXハンター」(2000年博多駅商店連合会)
(乗法の記号である「×」が駄目だったのか、アルファベットの「X」に置き換えられている。なお標題の読みは「はんたーえっくすはんたー」)
#「ア・ドロンの「ゾロ」」(1975年川端中央街)
(元々はアラン・ドロン主演映画「ゾロ」とのタイアップの飾りと推測されるが、アラン・ドロンの名前が使えなかったのか、はたまたA・ドロンにできなかったのか、はたまた時代がそういう略し方が主流だったのかは定かではないが、「アラン」が「ア」と略されている)

標題の読みには特に制限はないが、近年は標題の”読み”に凝るパターンも出てきた。

#「黒田鍋島天神大普請」(2024年ソラリア)
(標題の読みは「くろだなべしまてんじんびっぐばん」。黒田藩政時代から続く都市開発と、福岡市の都市再開発プロジェクト『天神ビッグバン』を繋げた標題テーマから、「大普請」を「ビッグバン」と読む)

なお、テレビ番組のタイトルを付けている標題があるので比較はしづらいが、戦後の山笠の標題で最長は1995年川端中央街の『美少女戦士セーラームーンスーパーズ』(17文字)。
舁き山笠では1954年土居流の『忠臣蔵松の廊下殿中刀優の場』(13文字)となっている。

標題の発表

標題は、毎年6月1日15時からに行われる博多祇園山笠振興会総会にて全標題が発表され、翌6月2日の0時から情報解禁となる。
これまでは、情報解禁は6月2日の午前10時以降で、印刷の関係上新聞は6月2日朝刊への掲載が出来ないため、翌6月3日の朝刊に掲載されていた。そのため全メディア足並みを揃えて6月3日の朝に情報を解禁していたが、2021年よりインターネットの普及を反映して、6月2日0時に情報を解禁してもよい事になった。

大余談だが、山笠ナビ運営開始時はそのルールを知らず、標題が掲載されたチラシ(山笠のしおり)が6月1日から櫛田神社境内に置いてあったので、それを手に入れて6月1日夕方に速攻で公開したところ、各所から抗議をを受けた事がある。(それを受けてか、これ以降チラシは6月3日以降に置かれるようになった気がする)
それ以降、山笠ナビは6月3日の朝刊が配達されるぐらいの午前3時ぐらいにわざわざ起きて手動で記事を公開していたのだが、2021年の情報解禁時間の変更を受けてシャレっ気を含めて6月2日の午前4時59分に記事を公開するようにしている。

なお、その昔は標題発表日は今よりも少々遅く、1957年(昭和32年)頃は6月17日に発表、1971年(昭和46年)は15日、1976年(昭和51年)頃は11日・・・と変遷をたどっている。

最古の標題

明治18年(1885年)に書かれた「松囃子・山笠記録」(山崎籐三郎著)によると、現存する最古の標題は、寛文旧年(1669年)の標題である。標題は以下の通り(地名は当時の地名)。

  • 一番山「衣笠合戦」(金屋町)
  • 二番山「義経鈴のお﨑にて貝取」(御供所町)
  • 三番山「白川合戦」(市小路下ノ番)
  • 四番山「大職冠」(釜屋町)
  • 五番山「摩屋合戦」(洲崎町)
  • 六番山「上瑠璃」(中小路町)

なお、江戸時代には専門の絵師が下絵を2つ描き、藩と年行司に届けなければならなかったという。

アニメの標題

テレビ番組の標題が登場し始めたのは戦後から。昭和31年(1956)に南流が漫画やラジオドラマで人気だった「赤胴鈴之助」(※映像化は1957年から)を皮切りに、標題を歴史や小説から採用する流れから、映画などのメディアから採用する方向へと進んでいく。昭和36年(1961)に新天町が大人気だった西部劇ドラマ「ララミー牧場」を標題に採用。

テレビアニメが標題に初めて採用されたのは、昭和39年(1964)から寿通が「狼少年ケン」、川端通が「鉄腕アトム」から。以降、子供向けの標題がこの昭和39年を機に激増。アニメに留まらず、ウルトラマンや仮面ライダーなどの特撮番組、ドリフターズなどの時代を代表するバラエティ番組なども採用されていった。テレビ発の標題が増える一方、子供が見る飾りという所からおとぎ話からの採用もこの昭和39年から増えていく。

昭和24年(1949)から令和6年(2024)までで、最も多く登場したアニメ作品は以下の通りとなっている。

・ドラえもん・・・17回
・サザエさん・・・16回
・名探偵コナン、アンパンマン・・・13回

ドラえもんは昭和59年(1984)東流の飾り山笠に初登場。平成10年(1998)川端中央街の飾り山笠では16回連続で登場した。
サザエさんは昭和50年(1975)博多駅ステーションビルの飾り山笠に初登場。新天町の飾り山笠には平成25年(2012)に登場、以降2024年まで12回連続で登場中である。
名探偵コナンは平成8年(1996)に渡辺通一丁目の飾り山笠に初登場。2014年まで登場したあと、その後渡辺通一丁目はアンパンマンに変わり現在9年連続で登場している。なお、アンパンマンの初登場はアンパンマンミュージアムがオープンした2014年の博多リバレインの飾り山笠である。
現在も登場回数を延ばしているのはサザエさんとアンパンマンで、サザエさんはこのまま登場し続ければ2025年にはドラえもんに並び、2026年には記録を更新する事になる。
(なお、連続登場回数ではサザエさんは、ドラえもんは16回連続、12回連続(2024年時点で更新中)となっている。)

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