7月15日がやってきてしまいました。山笠のない”追い山”の日です。
7月15日になったばかりの櫛田神社。例年だと参拝客で賑わっているのですが、今年はとても静かに7月15日が始まりました。
ライトアップされた清道旗もあと数時間で終了。山笠がない山笠が終わります。
拝殿内には午前3時から行われる祇園例大祭の準備が整えられており、古神札納所には参拝客が持ってきたお汐井てぼがたくさん収められていました。
神社としても大事な神事を行う日でもある7月15日。本日ばかりは社務所や授与所も、例年同様一晩中開いています。
終わっていく今年の山笠期間。何もないとわかっていても、ふと例年だと賑わっていたいつもの場所を巡ってみることにしました。
午前3時が近づいてくると、祇園例大祭に参加する山笠関係者が長法被を身にまとい、櫛田神社に集まってきます。
拝殿にも神事衣装の櫛田神社の神職の方々が、神事の確認や準備を行います。
午前3時、雅楽の演奏が始まり、祇園例大祭参加者が拝殿に入場。令和2年度の祇園例大祭が始まりました。
「祇園例大祭」とは、この祇園社が出来て以来ずっと続いている、櫛田神社の神事の中でも特に大切な神事で、博多の人々の安寧と平和を願う祈願の儀式です。
この神事を受けて行われるのが山笠の神事であり、この祇園例大祭が行われないと山笠は出発することができません。
例年だと100人以上が参加し拝殿がいっぱいになるのですが、今年は現在の情勢を考慮し半分以下の40名に人数を縮小しての催行となりました。
神職は、榊を束ねた大幣(おおぬさ)を振るい清めの水を掛け、神饌と参加者を祓い清めます。
拝殿には神社の関係者、山笠関係者の他、メディアも多数詰めかけており、拝殿の外でも午前3時ながらたくさんの一般市民が安寧と平和を願って神事に参加しています。
献饌(けんせん)の儀では、三方に乗せられた酒、魚、果物、祇園饅頭など神饌が次々と神前に運ばれ、供えられます
阿部宮司が祝詞の奏上を行います。博多の人々の安寧と平和を祈りつつ、いまだ猛威を振るう新型肺炎についても早期終息を願う内容の詞も含められ、参加者は読み上げられる祝詞の内容にじっと耳を傾けていました。
博多祇園山笠振興会 武田会長らが献幣使として献幣を行います。
そして、巫女による奉納の神楽舞が神前で行われ、手にした神楽鈴の音が拝殿に響きました。
最後に玉串奉奠が行われ、参加者は玉串を奉納し拝礼しまします。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、博多伝統の夏祭り、「博多祇園山笠」が来年に延期されたことを受けて、例年、追い山が行われる7月15日のきょう、福岡市の櫛田神社では、この祭りの起源と言われる疫病退散の神事が行われました。
— NHK福岡 (@nhk_fukuoka) July 15, 2020
#福岡NEWSWEB https://t.co/qJ80y3WRN9
【博多祇園山笠「追い山」は見送り・・・「祇園例大祭」】
— RKB毎日放送NEWS公式ツイッター (@rkbnews4ch) July 15, 2020
博多の夏の風物詩・博多祇園山笠は、新型コロナの影響で最終日の15日予定されていた追い山が実施されず、疫病退散を願う櫛田神社の神事・「祇園例大祭」のみが執り行われました。 pic.twitter.com/trr5ZMYAWi
最後に神棚に向かって一礼を行い、祇園例大祭は無事終了しました。
例大祭が終わると、時計は4時半。追い山の開始時間である午前4時59分まで30分もありません。
山笠がなくても、山笠に出る者の気持ちはいつもと同じ。今年も参加者が櫛田神社に参拝へ訪れます。
山笠関係者以外にも、一般の参拝客も追い山の時間が近づくにつれ増えてきます。
今年の山笠期間も本日で終わり。せっかくだからと、例年では出来ない清道前で飾り山をバックに記念撮影する姿も見られました。
やはり長年の行動のせいなのか、参拝すると次第に清道に集まり、清道旗の周りに”道”を作ってしまうマスク姿の”山のぼせ”達。
午前4時57分。何かを期待しているのか、何かを待っているのか、参加者たちは清道を中心に動きません。それを外側からにこやかに見つめる一般客の輪が。
突然誰かが大声で「2分前!」と叫び、清道からどっと笑い声が上がります。「そうだよ、それだよ」と、いつもの7月15日を思い出します。
午前4時59分。
「ドン!」
突然拝殿の太鼓の音が、清道に響きました。山笠の舁き出しを合図する太鼓の合図です。どっと沸く清道内。
太鼓の音が響く中、午前4時59分に山留から”追い山ランニング”を始めた方が、清道に入ってきて、清道旗をぐるりと回っていきます。その方を全員で拍手で迎え入れます。
そして次々と追い山ランニングを行う人たちが清道内に入ってきます。
ある方が、清道を回った後、能舞台に向かって立ち止まりました。
「祝いぃぃぃめでたぁぁぁのぉぉぉ、若松ぅぅ様ぁぁぁぁよ」
それは自然発生的に生まれた、”幻”の一番山の櫛田入り。流、年齢関係なく、その場にいた”山のぼせ”達が全員が、共に手を打ち博多祝いめでたを歌い上げます。
実に尊い光景でした。山笠がないとわかっていながら、山笠を愛する人々が集まり、午前4時59分の櫛田神社の清道で全員で祝い目出度を歌い上げる。この光景に、私には”山笠”の姿が見えました。
「ィヤァァァァァ!」
祝いめでたが歌い終わると同時に、鬨の声が上げて”追い山ランニング”を行う人たちが駆け出しました。その人たちを鼓舞するかのように、清道内から拍手と「オイサ」の掛け声が掛けられ、ランニングの人達は今年の”追い山”に出発しました。
今年も夏が来るらしい。
— tommy. (@tomy5_296_3timo) July 14, 2020
背中が寂しいのはきっと気のせい。
千代流の人たちのリアルエア山笠。
ありがとう。@yamakasa_navi pic.twitter.com/hUqyMVd9Xe
山笠がなくても7月15日の夜は明けていきます。例年だと7つの舁き山が博多の町を縦横無尽に舁き回っていることでしょうか。
櫛田神社で見た”幻の山笠”は、30分もすると須崎の廻り止めに到着。山のぼせ達の有志によって今年の奉納が無事行われました。
この日午前4時45分からKBCラジオで生放送を行っていた沢田幸二アナ達ラジオクルーも廻り止めに到着。廻り止めに到着した人たちに早速インタビューを行っていました。
櫛田神社の清道では、15日間博多を見守ってきた山笠のシンボルである清道旗が、東流の下東町の人達により下ろされました。
西流の人達は、能舞台の提灯が下ろし、神社外壁の雪洞を外していきます。
清道旗が下ろされたので、清道旗の玉垣も解かれていき、支柱を外す作業が行われていました。
支柱は地中に埋まった四角い穴に刺さっており、ずれないように木の楔(くさび)を隙間に打ち込まれており、四方から完全固定されています。木づちで叩いてそのくさびを外します。
清道旗の支柱を外すと、意外と誰も見たことがない清道旗を立てるための四角い穴がポッカリ。深さ1m50cmぐらいはあろうかと思われる深い穴に清道旗の支柱は立てられおり、山笠期間の間、清道の旗を支え続けていることがわかりました。
引き抜いた清道の支柱の代わりに、5月の鯉のぼり用の支柱が据えられ、山笠期間前と同じように博多松囃子の重要無形文化財指定を祝う旗が立てられました。
こうして山笠のない2020年の”博多祇園山笠”が終わりました。
武田会長がインタビューで「マスクせずに山が舁ける状態、一般の観光客の方、市民の方にも十分楽しんでいただけるような体制を早くとり、来年こそは盛大に行いたい」と語っていた通り、山笠ファンの一人として、来年こそ博多祇園山笠が”幻”ではなく現実として行われる事を楽しみにしたいと思います。