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疫病退散を祈願して、承天寺にて夏祈祷(大般若夏祈祷)が行われました

本日6月2日(火)、博多祇園山笠発祥の地である承天寺にて、「大般若夏祈祷」通称「夏祈祷」が午前8時半より行われました。大般若夏祈祷は、毎年6月1日と2日に行われている大般若の眞読の法要です。

例年であれば、1日目は山内(さんない:敷地内)の住職で夏祈祷を行い、2日目は承天寺一派の住職が集まり、そして博多祇園山笠振興会の役員や各流の総務らが長法被姿で参加して今年の山笠の安全と成功を祈願するという総勢50名近くが参加する盛大な会となるのですが、今年は博多祇園山笠が延期決定しているため山笠関係者の参加はなく、またこの状況下を鑑み、2日目も山内の住職8名だけで行われることになりました。

祭壇には承天寺の祈願の札が置かれており法要で祈願が掛けられます。今年のお札の裏には「新型肺炎怨敵退散」と筆で書かれており、この状況下の早期終息を祈願する特別な御札となっています。

午前8時半、夏祈祷の始まりを告げる鐘が叩かれ、方丈に住職らが入場し、大般若経の教典が収められた櫃の前に着座すると、2020年度の夏祈祷の法要が始まりました。

まず、神保至雲住職が、祭壇の前で仏具と御札をゆっくり回し祈願を行います。

そして鐘と木魚が叩かれる中、厳かに全員の読経が始まります。

読経の中、カーンカーンカーンと高い鐘の音が連続して叩かれると、住職らが目の前にある櫃を開け、全部で16部600巻に及ぶ『大般若波羅蜜多経』を取り出します。いよいよ『転読(てんどく)』が始まります。

『転読』とは、経典の題名と初・中・終の数行を読みあげながらパラパラとめくる事で全体を読んだことにする、大般若祈祷における独特の読経の方法です。蛇腹状に折り畳まれた大般若経の経典は、高く掲げられた位置から降るようにめくられたり、左右の手の間で扇状にめくられたりして、住職らに力強く次々と『読まれ』ていきます。

方丈には承天寺の開祖であり山笠の発祥となった聖一国師の絵と施餓鬼棚が。その御前で、まだ予断を許さない世界情勢のなか、大般若経が読み上げられていく光景は、聖一国師が水を撒きながら町を清めてまわり疫病退散を祈祷した鎌倉時代のその時と同じではないか、と想いを馳せてしまいます。

転読も終盤となり、神保住職が手元の鐘を鳴らすと、大きな木魚の音と共に住職よる読経が始まり、その読経が方丈に響き渡ります。

読経が終わると、神保住職が五体投地(最も丁寧な礼拝方法の一つ)で礼拝し、最後に祈祷が行われます。祈祷の中には「新型肺炎怨敵退散」の文字も含められ、現在の状況の早期終息の祈願が行われました。

こうして、2020年の夏祈祷は午前9時に無事終了しました。

祈祷を受けたこの承天寺の御札は関係者に配られるとのこと。山笠がない2020年でも、博多から疫病退散の願いが世界に向けて発信され続けています。