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櫛田神社の飾り山笠の飾付けが始まりました

飾り山笠の建設も境内側に入り、「う席」の二階席を建築するところまで入ってきました。櫛田神社の清道は鉄パイプの構造物で取り囲まれ、桟敷席の姿が徐々に見えて来つつあります。

本日6月12日(金)より櫛田神社の飾り山笠の飾付けが始まりました。午前8時過ぎより山大工が山小屋に到着。準備を開始します。

山小屋のそばにある恵比須会館には、前日搬入された飾り山笠の人形がずらり。飾り付けの出番を待っています。

現場に田中勇人形師が到着。山大工に下絵を見てもらい、イメージをつかんでもらいます。
櫛田神社の飾り山笠は、人形師の技術向上と経験を積むという目的で、3年毎に人形師が変わります。今年はその交代の年で、今年から3年間は表は田中勇人形師が、見送りは小副川太郎人形師が務める事になります。田中人形師は、2011年から3年間、父であり師でもある田中比呂志人形師と共に櫛田神社の飾りを手掛けたことがあり、今回で15年ぶり2度目の櫛田神社の飾りを担当することになります。

山小屋の前にある照明ボックスに、設計図となる下絵を貼り、いつでもイメージを確認できるようにしました。今年の標題は「天下分目関ケ原」。真田幸村が、関ヶ原の戦いをはじめ数々の戦局不利のなか、知略をもって勇猛果敢に敵陣に挑む場面です。

そして、飾り付けを待つ人形を恵比須会館から運び出し、山小屋前に並べていきます。

山小屋前に並べられた人形で、一気に山小屋前は華やかに。快晴の下で飾り付けができて、関係者は一安心です。

田中人形師は早速飾り付けの準備に取り掛かります。人形と人形を組みあわせたり、人形に刀や槍を持たせたり、飾り山笠にあげた後の角度の微調整を行う針金を付けたりと、忙しい時間になります。まずは真田幸村の人形を馬にまたがらせて留め、たずなとなる白布を人形の手に通していきます。

飾り山笠は10数メートルある高さなので、飾られる人形も見る人の事を考えて作られています。鎧の袖(肩当て)は、普通に着こむと肩の上に乗るため頭と平行になりますが、飾り山笠人形はそのように飾り付けると袖が見えなくなってしまいます。なので、田中人形師の子の人形では袖を立てて作られており、袖を見せるために後ろから支えが付けられていました。

一方で細部にこだわるのが人形師。飾りを上げたら見えなくなる馬の口の中のディテールのこだわりや、馬の皮膚感を出すために素体にラシャ布地を張るなど、リアリティにこだわっている箇所が随所に垣間見られます。

真田幸村の手に愛用の槍を持たせてビス止め。馬にしっぽを付けたり、パーツとパーツをホットボンドで張り付けたり・・・と次々と飾りを取り付けていきます。

背中から出した針金に、さらに針金をつけます。これは、飾り山笠の上にあげた後、この針金を引っ張って人形の角度を付けるためのものです。

飾り山笠の天辺に飾る三神を祀る額を、一番上に飾る館に取り付けます。「この差しもん額ですね、亡くなった三宅隆先生の物を頂いたものなんですよ。うちの亡くなった親父(田中比呂志)の兄弟弟子だったんでね」と、今年の飾りに特別な思いを持って取り組んでいる事を話してくれました。

山大工らも準備を進めます。今日一日は高所で作業を行うため、安全対策の完全装備。ハーネス型の墜落制止用器具を着用し、ヘルメットをかぶります。安全確認を全員で行って、いざ10数メートルある素山(飾り山笠の骨組み)へ。

まずはホコリがたっぷりついた矢切を掃除するところから。ブロワーで吹き飛ばし、雑巾で矢切の木材を拭き上げます。

掃除を終えたら、矢切に人形を引き上げるロープをかけました。飾り付け作業の準備が完了です。

飾り付けは先ずは必ず最初に三神の額から始められます。先輩人形師の三神の額が山大工の手によって引き上げられていき、素山の天辺に据えられます。

山小屋から少し離れた場所で田中人形師は、その据えた状況をチェック。「も少し浜側に振ってもらえますか?」と、博多の山笠の飾り付け独特な風習である地名を使った方向の指示を行いながら、飾りの角度や向きなどを調整していきます。

次は人形が引き上げられていきます。人形の背中に付けられた支柱に紐を結びつけられると、素山の上に登った山大工が慎重に慎重に引き上げ、人形の足場の飾りと組み合わせて飾られます。

櫛田神社を参拝しに来た観光客は、めったに見れない飾り山笠の飾り付けの様子を見れて興味津々。山小屋前で足を止め「わ、飾りをつけてる」「高いねぇ」と喜びながら、人形師と山大工の作業を見守ります。

次は徳川家康の人形です。同じように引っ張り上げられていきます。

「もう少し傾けてくれますか?・・・そうそう、そんな感じです」と声を上げて指示を出していく田中人形師。

「人形とか見て気づきました?」と唐突に田中人形師が話し出しました。「今年の標題、私と親父が15年前に櫛田神社の飾り山笠を担当した時、親父が作った表の飾りと同じ内容なんですよ」

2011年の櫛田神社の飾り山笠 表「智将疾風関ケ原」(人形師:田中比呂志)

「今年から櫛田神社の飾り山笠をやるって決まった時、”あー、だったら親父のアレを作りたいな”と思ったんですね。どこまで親父のヤツに近付けるのかチャレンジです。」と笑顔で話す田中勇人形師。田中人形師が見つめるその先で、親子二代の絆、そして師に挑戦する飾りが姿を現しつつありました。

櫛田神社の飾付けは、表は今日で終了。明日は見送り側の飾り付けが行われます。一般公開は7月1日から。あと約2週間、博多の町は徐々に熱気を帯び始めます。