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山笠飾りの制作現場でインターンシップの学生がお手伝い

6月に入り人形師による山笠作りも急ピッチで進んでいます。
東流の舁山と天神一丁目の飾山見送りを担当する人形師・白水英章さんの工房も飾作りが進められていますが、現在九州産業大学の学生がインターンシップの一環で制作の手伝いをしています。

九州産業大学 芸術学部 デザイン学科では、学外授業として夏休みを利用した現場でのインターンシップが行われています。ですが、今回は「山笠製作のお手伝い」という事なので夏前に募集が行われました。この募集に10名程の学生が応募して今回のインターンシップが実現。6月末までの1ヶ月間、一人7回程度、白水さんの工房で山笠飾り制作の手伝いを行います。

過去に数回インターンシップを受け入れた事のある白水さんですが、インターンシップの学生に山笠飾り制作の手伝いに携わってもらうのは今年が初めての試みです。

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小雨がパラパラと降る5月30日。この日は、映像などのデザインを勉強する「ビジュアルデザイン」専攻の瀬口香奈恵さん(左)と栩野水月(右)さんの2名が、山笠飾り制作の手伝いを行っていました。

瀬口さんも栩野さんも「飾山は毎年見るけど動く山笠は見たことがない」という市内在住の”山笠初心者”。
なぜこのインターンシップに応募したのか?と聞いてみると、「地元福岡の大きなお祭だから、関わってみたかったし、関わってみないともったいないと思ったから」という事です。

この日は、屋内では瀬口さんが、屋外のガレージでは栩野さんが作業を行います。

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先週の作業では、戻ってきた山笠の人形の修繕を行った瀬口さん。
今週の仕事は、館の屋根などに使う「金筋(きんすじ)」という部品作りです。

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ゴザから一本一本い草をばらし、8本~10本を束にして依りながらセロハンテープでまとめていきます。まとめた束に金紙を巻いて、金筋が1本完成です。
白水さんからは”20本作ってね”と頼まれたそうですが、手元の数を見てみるとまだまだこれから。

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「ゴザからこういうパーツが作られているんですね。地道な作業です。」と笑いながら、束ねたい草にテープを巻いていく瀬口さん。映画や演劇の背景やセットから映像の世界に興味を持った瀬口さんは、「こんなに小さい物が大きい物の一部になると思うとその凄さを実感します」と話していました。

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一方、外のガレージの作業場では、栩野さんが飾山で使用する「道」の飾りを作る仕事をしています。先週は壊れた道を修理したそうですが、今週はその修理した道に彩色を行っていました。

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脚立にはたくさんの道が重ねられており、それらに一つ一つ丁寧に筆を入れていく栩野さん。
作業中の部品は分かりやすい大きな飾りではありますが、「まだ飾山の制作に関わっている実感がないんです」とはにかみながら作業を進めていました。

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CMや広告の世界を目指したい栩野さんは、授業では絵を描く事はあっても立体物を作る事はまずないそうで、立体物に彩色する事は貴重な体験のようです。
「今までは飾山を作っている人の様子が分からなかったのですが、今年は親近感を感じると思うので、天神一丁目の飾山を見るのが今から楽しみです。」と話していました。

学生らが戸惑いながらも山笠飾りの手伝いに励む様子を「私も初めて山笠作りした時はあんな感じでしたから」と笑いながら語る白水さん。
白水さんは天神一丁目の飾山を手掛けて今年で9年目。9年前、飾山制作の知識がほぼない状態で飾山を作り上げ、それ以降、毎年毎年新しいことに気付き、そして新しい事へ挑戦し続けています。
そのご自身の経験を踏まえた上で、白水さんは

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「今の時点では、今の時の自分がベストじゃないですか。
 それだと今の自分を越えることがことがありませんよね。
 自分の範囲を越えた物と遭遇したとき、
 どうしたらいいか、適応したものをチョイスできるかどうか、
 そんな判断が出来るように経験値を上げていくのは大事ですね。」

と、山笠製作の手伝いをした経験を持ち帰って将来進む道の糧にして欲しい事を、インターンシップの学生達に期待しています。

インターンシップの学生達には、さらにいろいろな手伝いを行ってもらう予定とのこと。学生達は2015年の6月はとても貴重な一ヶ月となるのではないでしょうか。


 

なお、那珂川町中央公民館のロビーには、白水さん製作の飾山人形や部品を使った作品が展示されています。

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入り口すぐにあるのは公民館の柱を利用して円柱状に飾り付けられた2013年の天神一丁目の飾山風の作品。四面飾りならぬ360度飾りになっているのは必見です。

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ロビーには、昨年の飾山で使用された天狗と馬も飾ってありますので、那珂川町中央公民館のお近くを通る方はのぞいてみてはいかがでしょうか。