山笠準備期間に入って2日目。本日早朝に今年の標題が発表され、発表された標題の内容にSNSがザワザワしておりましたが、山笠は7月1日に向けて着々と準備を進めています。
本日早朝より、櫛田神社の飾り山笠の飾りを外す『山解き』が行われました。例年よりも一週間早い山解き作業です。
早朝7時に櫛田神社の飾り山笠前に集まった山大工と人形師。山大工が舁き棒の上に板を引いて足場を作り、飾り山笠の下の方から次々と波や岩こぶなどの飾りを止めている針金を切り離し、サクサクと外していきます。外した飾りを受け取った人形師は、山小屋前に運び出し一つ一つ飾りをバラバラにしていきます。
何しろ一年間屋外に飾っていた飾り山笠です。誇りや汚れがひどく、一年前はきれいな色をしていた飾りが埃まみれの薄汚れた色に。指でなぞるとはっきり跡が付くレベルです。
ひとつ飾りを動かすたびにもうもうと上がる埃に「埃が凄まじいね」と苦笑いする人形司武平人形師。皆マスクを着用したり、手拭等を口元に巻いて埃対策を行って作業を行います。
埃をブロワーで払ったり、洗える飾りは水を掛けて埃を落としたり・・・櫛田神社の山解きは『埃との戦い』でもあります。
ある程度小さな飾りを取り外したら、いよいよ大きい人形飾りを外していきます。大きな人形は降ろす人と、下で支える人、さらに地面に降ろす人など共同作業で降ろしていきます。
見送りを一年間飾り続けた大なまずの人形。一年の役目を終えて、下から自分がいた場所を眺めます。
表の人形飾りも次々と降ろされていきます。下ろす際にバランスが難しい武者人形などは、背中に付けられた針金などにロープを掛け、ゆっくりと引き下ろして大事に大事に地面に降ろされていきます。
山大工らの手によって慎重に下ろされていきますが、一年風雪に耐えた経年劣化のダメージは大きく、触っただけでボロボロと細かい装飾が落ちていく物も。「うわ!飾りが落ちたー!」と人形師も苦笑します。
きれいな白馬も目が埃で汚れ、白い馬体は埃が山のように積もって芦毛になっていました。
雨が降るか降らないか、ぐっと堪えていた曇り空からポツポツと雨が降り始め、埃まみれの人形に雨跡が付き始めます。
「人形は屋根のある所に運ぼう」と降ろした人形を、大急ぎで屋根のある恵比須会館に運び入れます。
まるで恵比須会館の敷地内を悠々と泳ぐ大なまず。彼を見るのもこれで見納めです。
わずか一時間の作業でほとんどの飾りが矢切(飾り山笠の骨組み)から降ろされました。作るのに数か月、飾り付けるのに2日、そして外す時は数時間。山笠の大変さを物語る数字です。
正午過ぎに見に行ってみると、山解きの作業は全て終了し、すっかり矢切だけの状態となっていました。これから櫛田神社の飾り山笠は、山笠台も一旦解かれて縄の巻き直しなどのメンテナンスが入れられ、再び棒締めが行われ、下旬には今年の飾り付けが行われます。それまでは一年間のスケジュールを見ると大変貴重な「飾りなし」の状態が続きます。
午前11時からは博多祇園山笠の発祥の地とされる承天寺にて、山笠の無事奉納を祈祷する大般若の眞読の法要、通称『夏祈祷』が行われました。
承天寺を地域内に持つ東流の構成町「駅前」が、来客の案内やお世話を担当します。
午前11時、開始を告げる鐘が叩かれ、それに合わせて住職や僧侶が方丈に入場してきます。
夏祈祷は毎年6月1日、2日に行われ、1日目は山内の住職で夏祈祷を行い、2日目は承天寺一派の衆僧が集まり、大般若経六百巻の真読法要が行います。2日目に参加する僧侶らは皆、特製の博多織の柄の袈裟を掛け、夏祈祷に臨みます。この2日目の夏祈祷には、博多祇園山笠振興会の役員や櫛田神社宮司、各流の総務らが長法被姿で参加し、今年の山笠の安全と成功を祈願します。
承天寺の神保至雲老師が、安全祈願の札を祈祷します。木札は山笠に取り付けられ、神の御札は流に手渡されます。
木魚を叩くと共に、参加した住職らが般若心経の読経を開始。方丈に住職らの声が響き渡ります。参加者は住職の後ろで参列し、読経に耳を傾けます。
鈴の音が鳴り響くと、住職前に置かれた櫃のふたを開け、『大般若波羅蜜多経』が取り出されると・・・
あちらこちらで、経典を蛇腹のように上から下へ落としながら大きな声で読経を行い始めます。「般若経典」は全部で16部600巻。全巻全てを読み上げるのは難しいので、パラパラとめくる事で全体を読んだことにする「転読」と呼ばれる読経で読誦するのが、この夏祈祷の特徴です。
神保老子が読経を終わり転読を行うと、五体投地を行って礼拝します。
他の住職も倣って礼拝を行うと、夏祈祷は厳かな空気の中、無事終わりました。
住職らの退出後、参加者は焼香して礼拝し、今年の山笠が安全安心に奉納が出来るよう祈願しました。