夏の日差しを感じさせる晴天となった6月29日、中洲流の山小屋前にて中洲流の舁山飾り付けが行われました。
今年は、今まで中洲流の飾を担当していた中村信喬さんから、その弟子である溝口堂央さんになりました。溝口さんは初めて舁き山を担当することになります。
6月28日に今の気持ちを聞いた所、「緊張してます。まるで合格発表を待っているような感じで」と笑顔で話してくれた溝口さん。13時からの飾り付けよりも早く現場入りし、準備をしていました。
今年の標題は「猩々酒宴壽(しょうじょうしゅえんのことぶき)」。猩々とは酒を好む中国の伝説上の動物で、能の五番目物『猩々』でも有名です。お酒を売って巨万の富を得るという内容のお話しからも、中洲流にはこれ以上にないピッタリな標題です。
テントには、後背に使用する大きな酒壺が。能の中では、酒が尽きることのない壺として描かれています。
その壺には、今年の中洲流の総務さんのお店でもある伊藤酒店の名前がこっそりデザインされており、それに気付いた中洲流の人達は破顔一笑。総務さんも嬉しそうです。
「僕のオリジナルデザインで、たまたまそういう風に見えるだけです」と言いながらしてやったりな顔で笑う溝口さん。この軽妙洒脱な感覚が今年の人形を作り上げています。
13時、手打ちを入れて飾り付けがスタート。山台に人形を据える所から始まります。
台に乗せて、据える位置を慎重に確認し、位置の指示を出す溝口さん。
真剣な目で、頭の中のイメージと照らし合わせながら確認し、指示を出していきます。
次に後背の据え付けに。
「少し前に倒して」という指示に合わせ、後背の角度の調整。
標題、二引きも取り付けられ、少しずつ舁山の姿が見えてきます。
総務も今年の舁山の姿を確認します。
次に人形の背中に飾り付ける大振りな松の木が運ばれてきます。
「もっと人形に近づけて、立てて」と溝口さんの指示が飛びます。それに合わせて山大工らが角度や位置を調整するも、溝口さんからOKの声がなかなか出ません。溝口さんは満足できるイメージになるまで、こだわって細かく指示を出していきます。
松が取り付けられた後は、波や岩こぶなどの飾り付けへ。
溝口さんの初めての中洲流舁山の飾り付けは続き、本日夕刻には完成しました。
「合格発表はいかがでしたか?」と聞いてみたところ、溝口さんは笑いながら「いやいや、まだ分かりません。これからです」と話してくれました。
溝口さんが手掛けた中洲流の舁山は、7月1日の飾山と合わせて一般公開されます。