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福岡市博物館にて『山笠の力 ハカタウツシ』展が始まりました

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11月3日(日)より、福岡市早良区百道浜の福岡市博物館にて、福岡市博物館リニューアルオープン記念特別企画・九州朝日放送創立60周年事業 『山笠の力 ハカタウツシ』展が始まりました。『山笠の力』展の開催にあたり、オープニングセレモニーと展示物をたっぷり見学してきました。貴重な文献や資料や展示物は山笠好きでも知らない&堪らない物ばかり。山笠ナビは4時間も滞在していたほどの展覧会だったので、ほんの触り程度はありますが展覧会の内容をレポートいたします。

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福岡市博物館の入り口を入ると眼前にそびえ立つのが、この展覧会の大きな目玉である、復元・再現した明治3年の巨大な舁き山。その高さは16メートル、差し物を含めると17メートルにもなる大きな”舁き山”です。

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表の標題は京都五条大橋の義経と弁慶の一戦を描いた『橋辨慶』(人形氏・亀田均)、見送りの標題は源義経の一ノ谷の合戦での名場面『義経一ノ谷』(人形氏・生野四郎)です。

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開館30分前に行われたオープニングセレモニーでは、福岡市長 高島宗一郎氏があいさつ。
「博多の原動力である山家のことをもっと知ってもらいたい。多くの感動と博多の誇りを伝えたいと思っています。」

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博物館館長の有馬学氏、リニューアル検討委員会委員長の田坂大蔵氏からあいさつ。
「今回のリニューアルは、博物館開館以来のリニューアルです。」

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九州朝日放送(KBC)代表取締役社長の竹内健二氏は、初めて行った博多祇園山笠の中継の秘話を披露。
「KBCがテレビ放送を開始したのは1959年。山笠中継は社業であるという考えから、その翌年の1960年より追い山中継を始めました。開局したばかりだから生中継を行う力はまだ無く、第1回の「走れ!山笠は」午後2時から45分間の録画中継で、東京と大阪でも放送されました。」

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博多祇園山笠振興会会長の瀧田喜代三氏は明治時代の舁き山を見て、当時はどれだけの労力などが掛かったかを想像すると敬服するとして歴史の継承を誓うスピーチを行いました。

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記念のテープカットは、追い山清道入りと同様に5秒前からカウントし、会場の人が「ヤー!」の鬨の声を上げての博多祇園山笠の展覧会らしいテープカット。櫛田神社から追い山の時に使用する太鼓を準備し、追い山の太鼓を叩いて10年の櫛田神社の髙山定史氏が、追い山の時と同様太鼓を叩き、テープカットを盛り上げました。

ここから『山笠の力 ハカタウツシ』展が開幕です。(※取材で館内を撮影させて頂いています。実際は撮影は不可となっています。ご了承ください。)

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入り口すぐに観客を迎えるのは、3体の古式山笠模型。

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その緻密で力強い造形に圧倒されます。

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館内には全285点に及ぶ屏風や絵馬、文献などなど、博多祇園山笠の長い歴史を伝える様々な資料がたくさん展示されています。

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開館記念として、学芸員の方より展示内容を解説、案内して頂きました。初めて聞くような話ばかりで、その中からいくつかピックアップして展示物を紹介します。

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1796年の山笠図屏風。一番右側が一番山ですが、一番山には祗園紋が入った台幕が、二番山には櫛田紋が入った台幕が、それ以降の山には紋が入っていない台幕が懸けられています。これは、現在の津屋崎の祇園山笠では一番山しか神様が乗らないという言い伝えになっている事から、この頃の博多祇園山笠ではその言い伝えが残っていたものと思われます。この年の前後の山笠図屏風を見ると紋が入っている・入っていないの歴史が比較されますので、とても興味深い資料です。

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元祖「山のぼせ」と言われている内海蘭渓。本草学者として活躍した人で、いつまでも山笠が見たいという事でお墓も承天寺にお墓があります。山のぼせと言うのは「山笠を詳しく説明できる人」のことを指すそうです。

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江戸時代の山笠下絵。この写真から分かるように、昔の山笠には人形が付いていない山もあったという事が分かります。

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団扇に書かれた山笠番付。江戸時代の1807年から明治初期の1870年の物。その昔山笠の標題を書いた団扇が売られていたそうで、それを個人の方がコレクションしていたという逸品。団扇の紙部分だけでなく団扇の骨まで付けて残していた物も現存していたという、コレクター魂が炸裂している貴重な資料です。

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KBC九州朝日放送が保存している「走れ!山笠」のダイジェストも流れています。一番古い映像は昭和35年。「当時は夜明け前で真っ暗な中で追い山は行われていたのが、中継のためにライトを入れた所、山の人たちからこっぴどく怒られた。そこは平身低頭して謝り倒して何とかライト使わせて貰えるようになったが、これが”明るい”山笠の歴史になったかと思うと感慨深い」と語っていた映像を見る事が出来ます。

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第一回の子供山笠を完全再現しています。戦後間もない1946年5月、博多復興祭にて子供山笠から博多祇園山笠は復興を始めました。人形の代わりの絵を描いたのは今でも山笠飾りで活躍する置鮎琢磨氏。67年振りに同じ絵を描いてもらい、残っていた竪町の台幕も山笠関係者より借りて完全再現となりました。後ろの当時の写真パネルを見ると、奈良屋小学校の割れたガラスなど戦後を感じる一方で、復興に一歩を踏み出す子供山笠の模様が胸を打ちます。

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2013年1月から2月にかけてインターネットで話題となった明治3年の舁き山の写真が紹介されています。この舁き山の写真はボストン美術館が所蔵しており、インターネット閲覧で確認されとても「ハウルの動く城か!?」と大きな話題となりました。何故ボストン美術館に舁き山の写真が所蔵されているのかが疑問だったのですが、福岡藩士が米国に留学した際に持って行ってプレゼントした写真と分かったそうです。

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このボストン美術館に所蔵された写真が見つかるまでは、こちらの写真が唯一明治3年の舁き山写真でした。こちらは一番山で、ボストン美術館の写真は二番山だそうです。

展示されている資料の中で、個人的に一番ぐっと来たのが「筑前国博多祗園祭礼之図絵馬」。1876年に広島県厳島神社に奉納されていた博多祇園山笠の絵馬です。なぜ厳島神社に山笠の絵馬が?と思われますが、当時の歴史を知ると実に興味深い話が引き出せます。
明治初期、山笠と松囃子は風俗をみだす物として禁止されいたのですが、1875年山笠直前になって一時的に禁止令が解かれました。しかし急に禁止令が解かれたため山の飾りを作る時間が無かったため、人形に浴衣を着せた物で代用した通称「浴衣山」を建てました。
しかし翌年より山笠は再び禁止となります。1876年の当番町であった綱場町は禁止令が解かれ当番町の務めが出来る事を事を祈り、博多と縁深い平家の神社である厳島神社に奉納したのではないか、と考えられています。
様々なドラマが詰め込まれたこの「筑前国博多祗園祭礼之図絵馬」は、ぜひ博物館で生でご覧になってそのドラマを感じて頂けたらと思います。

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『山笠の力 ハカタウツシ』展の後半は、博多祇園山笠がどのようにして伝播したかを検証する『ハカタウツシ』と呼ばれる各地域に残る山笠の影響が紹介されています。

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展示の一番最後は最も新しく遠いハカタウツシ、北海道の芦別健夏山笠の資料。博多祇園山笠に魅了された芦別の人たちが、地域連携をテーマに博多祇園山笠を始めたのが20年前です。

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「山笠とは人との繋がりである」としたこの『山笠の力 ハカタウツシ』展が出した答えは、この長い博多祇園山笠の歴史を見つめると博多と舁き手達の繋がりの関係性を見つめるとよく分かります。
今回のレポートで紹介した資料や逸話はほんの少しだけです。会期は12月23日までとなっておりますので、ぜひ足を運んで頂いて、博多祇園山笠の歴史と深さと人との繋がりをぜひその目でご覧に成ってください。山笠ファンならきっと満足できる展覧会となっています。


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また『山笠の力』展の他にも、今回リニューアルオープンした常設展示にも博多祇園山笠コーナーが設けられています。

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博多祇園山笠の紹介コーナーでは、今回の常設展示リニューアルに合せて新たに作られた舁き山の展示や、滅多に見る事が出来ない貴重な品の数々、山笠のフィギュア、追善山の模様など貴重な資料が展示されていますので、『山笠の力』展と共に常設展示にもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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小松の親分さんも博多一本締めをして待っています。


会場 福岡市博物館 特別展示室(福岡市早良区百道浜3丁目1-1)
会期 平成25年11月3日(日・祝)~12月23日(月・祝)
開館時間 9時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日 月曜日(ただし、11月4日・12月23日は開館)、及び11月5日(火)
観覧料 一般1,200(1,000)円  高大生800(600)円  中学生以下無料
※( )内は前売・20名以上の団体及び65歳以上(要公的証明)の割引料金。
※本展覧会の観覧券で常設展示も観覧可能
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳(以上の手帳を提示した人の介護者1人を含む)及び、特定疾患医療受給者証・先天性血液凝固因子障害等医療受給者証・小児慢性特定疾患医療受診券を提示の場合は無料。

◆福岡タワーとのお得なセット券発売!
福岡タワー開業25周年(26年3月)+ 福岡市博物館リニューアル記念特別企画
通常2,000円(福岡タワー展望料金大人800円+福岡市博物館「山笠の力展」一般1,200円)が、セット券は、1,400円でお求めいただけます。600円お得です。
販売場所  福岡市博物館2階特別展チケット売り場(11月3日から) 福岡タワー1階チケット売り場
販売期間  12月23日(日・祝)まで
※有効期限  福岡市博物館「山笠の力展」 12月23日(月・祝)まで
福岡タワー展望券 12月31日(火)まで
主催 福岡市博物館、九州朝日放送㈱、西日本新聞社、「山笠の力」展実行委員会
特別協力 博多祇園山笠振興会、博多総鎮守櫛田神社
協力 独立行政法人日本芸術文化振興会
特別協賛 ふくや
協賛 公益財団法人福岡文化財団、第21回ふくおか県民文化祭2013
後援 福岡県、福岡県教育委員会、福岡市教育委員会、公益財団法人福岡市文化芸術振興財団、福岡県神社庁