山笠台の4本の台足に対角線に張られた荒縄の事。
対角線の足の上部・下部に麻縄が幾重にも巻かれており、台脚「八」箇所を締め付け、対角線状に張られた形が漢字の「八」に見える事から名づけられたと思われる。もちろん釘等は一切使われない。
山笠は大変重くしかも勢いをつけて走るので、台座となるこの山笠台ににかかる衝撃はすさまじい物になるのだが、この八つ文字が衝撃を吸収して台足が折れるのを防いでいる。さらに水を含む事によって収縮性がうまれ、山笠が衝撃を受けても歪みを直し、山笠台全体の「ねじれ」をこの部分で受け止めて逃がす役割を果たすという、舁き山笠で大変重要な役割を果たしている。
この工夫は昔の人たちのすばらしい智恵であり、この脈々と受け継がれてきた伝統の技術こそ博多山祇園山笠が国の無形民俗文化財に指定された理由の一つでもある。
八つ文字は、小屋入りの神事を行った後に、山大工の作業場にて山笠台が組まれ、熟練した山笠大工らによってで掛けられる。八つ文字が掛けられた後は山小屋まで運ばれる。(※流や飾り山笠によっては山課題を組み上げた後に地鎮祭を行ってお祓いをするところもある。)
4本の台足に八文字掛けをする際は、荒縄は左回りにしめる、など約束ごとがあるという。
資料を読むと、江戸期はライバルの流を妨害するため、夜中に舁き山笠の命である八ツ文字を切断しに来る不心得もいたらしく、毎晩夜を徹して見張り(=「夜警」)をするようになったらしい。
山大工の腕の見せ所である八つ文字は山大工の象徴であり、土居流や上川端通の山笠台を担当する山大工のグループは、通称「八文字組」という名前で山笠活動を行っており、山笠台がプリントされた揃いのTシャツを着用している。(川端商店街のイベントなどでこのTシャツの販売などをしてることもある)