(取材協力:山笠ナビ公式サポートスタッフ M_Film)
博多祇園山笠も本日を含めるとあと4日。動の山笠もいよいよ「追山笠馴らし(追い山ならし)」を迎えました。追い山ならしは、7月15日の追山笠(追い山)とほぼ同じコースを走る、いわば”リハーサル”のような行事ですが、リハーサルという言葉では終わらせられない男達の厚い気持ちがぶつかり合う追い山さながらの行事です。
7月12日(火)、朝から博多の町では追い山ならしの準備が進められ、奇妙な高揚感に包まれ始めていきます。
今日の博多は晴天で風も吹く暑いながらも絶好の追い山ならし日和となりました。
櫛田神社では、お昼が近づくにつれ早くも桟敷席の席取りの列が作られ始め、3年ぶりに行われる追い山ならしを楽しみにしていた人たちが集まってきます。
午後2時に入ると、各流は舁き山を冷泉公園の山列まで運び入れるため、各山小屋を舁き出します。
午後2時45分、千代流が山列に入り、七流全ての舁き山が集結しました。
今年は感染防止対策として、舁き手の密集化を避けるために、例年よりも舁き山と舁き山の間を大きく取っており、七番山笠 千代流の山据えの場所は土居通りの明治通り交差点付近となっています。
そして、冷泉公園横には八番山笠 上川端通が。二段目・三段目の部分を伸ばし、二引の旗を立てたいわば”完全体”。悠然と据えられたその姿は、人々の目を奪います
各舁き山前では各町の手打ちが始まり、刻一刻と舁き出し時間である15時59分に向かって進んでいきます。
博多祇園山笠振興会より一般の方へ見物自粛を要請しておりましたが、3年ぶりの追い山ならしを一目見ようと集まった見物客が沿道を埋めています。実際の所、自粛要請と平日開催というのも相成ってか、2019年と比べたら、約60%ぐらいの見物客数というのが実感でした。
桟敷席は例年通りの埋まり具合という感じがしました。
櫛田入り30分前から始まった、KBCの長岡大河アナウンサーによる場内アナウンスでは、この2年間のコロナに苦汁を味わされた博多祇園山笠の想いと、今年開催されるにあたり尽力してくれた関係各所への社寺が述べられ、櫛田入りが行われた際は「場内の皆様は心の中で舁き手と共に祝い目出度をご唱和ください」とアナウンスされました。
そして、午後3時59分がやってきます・・・!
一番山笠だけの誉「祝い目出度」を歌い終えた恵比須流は、清道から飛び出すと国体道路へ向かい、東長寺と承天寺の清道旗を目指します。
恵比須流が舁き出した後、二番山笠以降の流も5分おきにスタートし、博多の町へ飛び出していきます。
東長寺と承天寺に立てられた清道の旗を目一本しながら拝礼した舁き山笠は、道幅の狭い旧東町筋を走り抜けていきます。
旧東町筋を北上すると、次は博多の大動脈である大博通りへ。道幅が広くて走りやすいけど山笠の進行軌道が蛇行してスピードが落ちやすいエリアで、その大博通りを南下していきます。
七流が櫛田入りを終えた後に櫛田入りを行った八番山笠上川端通が、巨体を揺らしながら大博通りに登場。人々のどよめきを浴びながら二引の旗を気持ちよくなびかせて人力のみで担がれて進んでいきます。
広い大博通りを南下した後は、右折して再び狭い道へ。旧西町筋を北上します。これが追い山ならし最後の直線コースとなります。
この2年間で博多の町の風景も変わりました。旧西町筋の難所と呼ばれた場所には、ビルの代わりにビジネスホテルが建ち、舁き山は姿を変えた新しい難所を直角に曲がっていきます。
旧西町筋の名所「勢水処(きおいみずどころ)」。左手にあった修験道の寺院「宝照院」は大きな水桶があって大量の勢水が舁き手に掛けられていた名所でもありました。しかし2021年に老朽化により太宰府に”里帰り”し無くなってしまいましたが、付近の方々の力によりたくさんの水バケツが並び、舁き手達には2年のブランクを感じさせないような大量の勢水が浴びせ掛けられ、まさに「勢水処」の所以を示します。
勢水処を抜けると、西流の山小屋に見えるのは追い山ならしのゴール地点である廻り止めの赤い幕が見えてきます。男達は最後の力を振り絞って山を舁いてきます。
追い山ならし廻り止めの風景もこの2年間で変わりました。奈良屋ビルからスーパに変わりましたが、舁き手達を待つ風景は変わりません。櫓で招き旗が振られ、それに鼓舞されるかのように舁き山はこの場所を目指します。
幕の下を舁き山が潜り抜けると山舁きは終了。すぐにタイムが掲示され、そのタイムを見て見物客から歓声が上がります。最後七番山笠を務める千代流が廻り止めに到着し、3年ぶりに行われた追い山ならしは無事終了しました。
明日は山笠期間で唯一福岡部(天神側)に舁き入れが行われる「集団山見せ」。それが終わると、いよいよ・・・フィナーレ「追い山」が見てきます。
・恵比須流 35秒87
・土居流 37秒25
・大黒流 40秒76
・東流 31秒31
・中洲流 40秒01
・西流 39秒96
・千代流 34秒94
・上川端通 56秒38
・恵比須流 32分01秒
・土居流 30分25秒
・大黒流 29分33秒
・東流 27分15秒
・中洲流 31分46秒
・西流 29分02秒
・千代流 27分34秒