博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

櫛田の銀杏(くしだのぎなん)

櫛田神社の玉垣に植えられている巨大な銀杏の木を、博多の人達は愛情を込めて「櫛田の銀杏(ぎなん)」と呼ぶ。昭和29年(1954年)に県の天然記念物の指定を受けている。
銀杏の木は樹勢が強く、剛壮な樹形になって、葉が独特な扇形をするので神格木として扱われ、神社、仏閣に多く植栽されてきた。従って各地に老大木が多い。
現在の所、直径は190 cm。夏になると青々とした枝葉を茂らせる。

樹齢は、正確な数字は不明。大正7年の本樹保存記念碑には「樹齢1000年以上」と記載されているが、計算をすると残念ながら1000年は経っていない。しかし600年は確実に超しており、その姿は神木として風格のある佇まいをしている。
その姿と生命力は古くから広く崇敬されており、博多祝いめでたに於いて「さても見事な櫛田の銀杏、枝も栄ゆりゃ葉も繁る」と謡い囃されている。

櫛田の銀杏は、今もなお夏になると枝葉を元気に青々と繁げ盛るのだが、八番山上川端通の走る山笠は、飾り山の高さ故にこの元気に栄えた枝葉に当たりながら櫛田入りする事になる。
そのため、飾りが痛む事に人形師は苦心するようで、 山が当たる部分の枝を切ってほしいと櫛田神社にお願いするが、神木の枝葉は切ってはいけない事になってるようで、未だに叶えられてないらしい。

昭和31年(1956年)、櫛田神社前の土居通りが都市計画区画整理で道幅が15メートルに各幅されることになったが、それが実行されると県天然記念物の「櫛田の銀杏」の根本が危うくなるとの事で反対の声が強まった。
福岡市と博多祇園山笠振興会の間で7年近く協議を行った結果、銀杏の近くだけ道幅を13メートルにする事で”妥協”したという歴史がある。

八番山 上川端通と櫛田の銀杏

7月13日の追い山ならしと15日の追い山のみ清道入りを行う「走る飾り山」八番山笠 上川端通は、その異名の通り実際に走る飾り山である。その高さは二引の旗の高さを含めえると、実に約13メートルに達する。
ただ、その高さが仇となり、二引の旗が青々と茂った初夏の櫛田の銀杏の枝葉とぶつかることが多いため、上川端通の清道入りは山大工がハラハラするという「悩みの種」となっている。

清道入りの際は、鼻取がうまく枝にぶつからないように山笠の進路を取っているのだが、それでも枝葉の勢いが強い時は枝葉に二引が突っ込まざるを得ないこともあり、そのたびに関係者の顔に緊張が走る。

2015年の櫛田入り。銀杏の枝葉に二引が当たる。

2018年の櫛田入り。山笠の進路が銀杏を回避する様子がうかがえる。

そのような状況とトラブル発生の度に、上川端通の山大工は二引の旗のアップデートを都度行っており、現在は旗の根元部分がバネ状の土台となっている。これによって二引の旗が枝葉に当たっても、しなやかに曲がって枝葉を受け流すというしなやかな高度技術が実装されている。

また、2019年度は銀杏の木の剪定が行われたようで、少なくとも2019年は例年よりも枝葉に当たる確率は減っているものと思われる。