博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

手一本(ていっぽん)

dic-teippon

「博多手一本」とも呼ばれ、約束事の確認や物事のけじめをつける時に使う。山笠では、各町から舁山前に集合したときなどにも入れられる。
手「一本」という名前ではあるが、一般的な手一本のように一度手を打つのではなく、独特の拍子で複数回手を打つのが特徴。

また、博多での手一本は「後日、異議はありません」の約束となり、この手一本でその場はお開きとなる。そのため、博多で手一本の後に異論を唱えることは不作法とされている。 また、そのような意味合いでの手一本の後は拍手をするのも不作法とされる。

単独でこれで締める場合もあるが、大きな会合などの場合では「祝いめでた」の唱和をしたあとに、博多手一本を行う流れが多い。
祝いめでたとと手一本のセットは、山笠の場だけではなく忘年会などの席でもよく見られ、また結婚披露宴でも最後に行われる事も多い。これは手一本が持つ「締め」と「異論なし」の意味から「この結婚を了承しました」という事を意味する。

ただ、山笠期間中では、参加者が各町を出発する際や、集合の際の当番町と各町間でも行う際にも「手一本」が行われる。
この時の手一本には締めの意味はなく「よろしくお願いします」というあいさつの意味で行われている。そのため、博多手一本と区別するため、こちらの手一本は単に「手打ち」と呼ばれる。

ちなみに、2011年のプロ野球日本シリーズにおいて、地元・福岡ソフトバンクホークスが中日ドラゴンズを破り悲願の8年ぶり悲願の日本一を達成した際、恒例の優勝ビール掛けが行われたのだが、そのビール掛けを締める際に「手一本入れます!」と入れたのだが、それがいわゆる通常の手一本だったために、twitterでは「福岡のチームなのになぜ博多手一本じゃないんだ!」というブーイングツイートが多数流れた。

手一本の入れ方

一本締めというと手を一回叩く作法だが、博多手一本は複数回手を叩く。
博多手一本のやり方は、体の前で手を打つ体勢を整えた上で、

# 「よーお」(パン・パン)
# 「も一つ(もひとつ)」(パン・パン)
# 「祝うて三度(いおうてさんど)」(パパン・パン)

と、その場の仕切り役の掛け声に合せて行うのが慣例。
山笠の際の手一本は大変スピードが速いため訛って聞こえる事も多く「もーつっしょ」「まひとつしょ」、「いおうてさん」「よーてさんど」「よーとさん」「よてさん」と聞こえる事もある。

一般的な「一本締め」「三本締め」とは異なる手の入れ方のため、結婚式など県外の人が多数いる場所は、まずは博多手一本の簡単な説明と簡単な練習を行ってから、本当の手一本を入れる事が多い。

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大阪締め

この博多手一本は、大阪に伝わる「大阪締め」と似ているところがある事で話題になる事もある。

大阪内でも地域で作法が異なる場合があるが、
# 「打ーちまひょ(打ーちましょっ)」 パン・パン # 「もひとつせ」 パン・パン
# 「祝うて三度」 パパン・パン(天満・船場周辺)、パン・パン・パン(生玉神社周辺)、パンパン・パン(平野郷)
と手が入れられる。
また、「男締め」「女締め」と性別によって最初の一言目が変わるそうで、男締めは「打ちまーしょ」、女締めは「打ーちましょ」で始まる。落語家の間では女性がいても男締めで統一するとのこと。

テンポは違えど、大阪船場の言葉であるとされる「ごりょんさん」といった古くからの商業都市・大阪とのつながりを何となく感じるところがある。

津屋崎祇園山笠での一本締め

博多祇園山笠がハカタウツシ(博多を模範とした祭りやしきたりが伝播した文化)で伝わったとされる津屋崎祇園山笠でも、博多手一本と似た一本締めが行われる。

テンポが取りやすい流れで、最後はパン・パンと手を打った後、最後の拍の代わりに万歳をするように両手を上げるのが特徴。