博多祇園山笠用語辞典 YAMAKASA DICTIONARY

追い越し(おいこし)

追い山は『七流が櫛田入りから決勝点・須崎町までの走破タイムで勝負する祭』と思われがちなのだが、本来は奉納神事であるという事を忘れている人が多い。
しかし、タイムを計測する以上、比べたくなり相手に勝ちたいと熱くなるのは人の性であり、博多祇園山笠でもそれは例外ではない。

博多祇園山笠において、後続の流に追い超されるのは非常な不名誉な事とされている。
歴史を紐解くとその追い越し事件は過去数回起こっているが、追い越しをしたため町ぐるみの喧嘩まで発展したこともあると言われている。
(もともとこの「追い越し」をしたことで、決勝点までのスピードを競争するという独自の祭文化が生まれたわけではあるが)

実際道幅が広いのは大博通りだけなので追い越しは不可能に近いのだが、現在では追い越しそうになった場合は、相手の名誉を守るために自分のスピードを犠牲にするのが慣例である。追い越しそうになると、役員が前で山を制止しある程度の距離を確保して舁き出すのが暗黙のルールである。

『博多祗園山笠史談』によると寬正7年(1795年)に、奥の堂・赤間町の角付近にて六番山笠の東町下(東流)が五番山笠の洲崎町中(大黒流)に追いついてしまったのだが、六番山が舁き方を猶予したので無事に相済んだ、と記されており、その寛大さを称えて酒肴をおくったという。

早さを競いながら、追い抜かずに名誉を守る。これこそ博多祇園山笠シップといえよう。